多地点合同メディカル・カンファレンス
             [1999-第19回]

日 時:1999年6月3日(木) 16:30から18:00
場 所:国際交流会館3階
テーマ:肺がんの診断に対する問題点-呼吸器内科医 冬の時代-
                          (岩手県立中央病院発信)

  司会 岩手県立中央病院 呼吸器科 武内健一

 肺は特に複雑極まりない臓器であり、そこにはそれこそ病理学の総論すべてを網羅 して余りある程の多彩な疾患が存在する。そして、その疾患の診断に際し、画像診
断で肝胆膵系の悪性腫瘍を診断することが可能な消化管疾患と異なり、影、すなわち画像のみで診断を下すことはなかなか困難を極める。
 画像上、明らかに悪性を示唆する所見を有しながら術後の病理診断では非腫瘍性疾患であった、などという例や、またその逆の症例も経験する所である。そこで呼吸器科医はEvidenceを得るために、あら ゆる手段を試みる。が、しかし陰影が小さければ小さい程、診断は難しく限界があり、呼吸器外科医の手を煩わせることになる。一方では、胸腔鏡などの観血的処置を講ずる前に、なんとか診断を下したいと思うのも呼吸器科の本音である。
 今回は肺の小型ないし微少陰影の、我々が試みている独自の検出方法や内科、外科の診断へのアプローチを紹介するとともに、特にCT画像を中心に、肺がん診断にどこまで迫り得るのか検討し、諸先生方の御教授をいただき、各施設のノウハウをお聞かせいただければと考えている。

1.呼吸器内科医不要論
      岩手県立中央病院 呼吸器科 武内健一
 現在のところ、異常陰影の検出という点ではHelical CTの右にでるものはない。むしろ、あまりに微少な陰影が描出されるため、我々のような野戦病院的な現場では
軽い混乱さえ生じている。すなわち、微少な肺がんらしい影を見つけてはみたものの、そこへ到達する手段を多く持ち合わせていないために、さらに積極的に診断を進めるべきか、経過観察すべきか、難しい選択を迫られる場合がある。と言っても気管支鏡には限度があり、いきおい呼吸器外科医が多忙を極めることになる。こと肺がんの診断に関して内科医不要という冬時代の到来である。

2.肺腫瘤陰影検出のための経時的差分画像応用
    岩手県立中央病院 中央放射線部 佐々木康夫
 経時的差分法は時期をおいた 2つの画像間の変化分を差分して強調する手法であり、 その技術には 2画像間の大局的な位置合わせ、胸郭内部の局所的移動量の計測、画像の変形による形状マッチングなどが含まれている。CRを用いた肺がん検診例を対象として今年度、昨年度画像および差分画像を2台のCRTモニターに同時に表示し10地域を対象に過去3年間でそれぞれ約10&s_comma;000件の肺がん集団検診を行った。 経時的差分画像は約93.4%でアーチファクトの少ない診断に適した画像が得られた他、主観的臨床評価では肺腫瘤の検出に役立つ結果がえられた。

3.CTによる肺がんの画像診断
      虎の門病院 放射線診断学科 黒崎敦子
 HRCT上、ground glass opacity(GGO)を呈する中心に瘢痕を持たない早期肺がん に出会う機会が増えている。これらは、肺胞上皮置換型発育をしめす高分化腺がんで、大部分は粘液非産生細胞型細気管支肺胞がん nonmucinous bronchioloalveolar carcinoma(BAC)である。病理学的には、気腔を保ちつつ一層の円柱状、あるいは立 方状の腫瘍細胞がやや肥厚した肺胞中隔に沿って増殖している。BAC、およびGGOを呈する他疾患の実例をその鑑別点も含めて呈示する。

4.診断未確定肺野末梢小型陰影に対する外科的アプローチ
  岩手県立中央病院 呼吸器外科 石木幹人 大浦裕之
 集団検診の普及や画像診断技術の進歩により、確定診断が困難な10mm前後の肺野小病変が発見される機会が増加しているが、肺がん切除成績の向上を図るためには、
このサイズの病変に対しても積極的な外科的アプローチが必要であると考えられる。今回、最近 6年間に当科で胸腔鏡下に切除した最大径15mm以下の術前未確診肺野小病変の42例を対象とし、その術前画像診断と生検成績の対比から、胸腔鏡下肺生検の適応基準および今後の課題につき検討したので報告する。