多地点合同メディカル・カンファレンス
             [1999-第16回]

        日 時:1999年5月13日(木) 16:30から18:00
         場 所:国際交流会館 3階
          テーマ:ウイルス感染と発がん
                     (国立がんセンター東病院発信)

            司会 国立がんセンター東病院 消化器内科 丸 泰司

 近年、ウイルスの持続感染が発がんとどのような関係があるのかが注目されている。

 肝細胞がんの発生へのHBV、HCVの関与は有名であるが、そのいずれの感染も認めない肝細胞がん患者は10%前後存在し、未知の肝炎ウイルスによる発がんへの関与が疑わ れる。また、ヒトに持続感染する細菌 Helicobacter pyloriは胃MALTリンパ腫の原因 の一つと考えられている。これらの宿主に持続感染するウイルス、細菌とがんについ ての話題を報告する。

1.当院における肝細胞がん患者の背景肝疾患
                国立がんセンター東病院 消化器内科 丸 泰司
 B型肝炎ウイルス(HBV)はヒトの肝臓に持続感染し慢性肝炎、肝硬変の原因となり、 肝細胞がんの原因の一つであることが知られている。本邦の肝細胞がん患者の約20% がHBs抗原陽性のHBV感染患者であるが、C型肝炎ウイルス(HCV)の発見により、残りのHBV非感染肝細胞がん患者のほとんどがHCV感染者であることがわかった。

 しかし、 HBV、HCVのいずれの感染も認めない肝細胞がん患者は10%前後存在し、未知の肝炎ウ イルスによる発がんへの関与が疑われていた。 近年新しい肝炎(?)ウイルスとして HGV、TTVが報告されたがこれらと肝炎、肝細胞がんとの関係は不明である。当院にお ける肝細胞がん患者の背景肝疾患と治療について報告し、話題提供としたい。

2.肝炎ウイルスと発がん
                  癌研究所 遺伝子研究施設部 小池克郎
 B型肝炎ウイルス(HBV)感染による肝がんの発症には、慢性肝炎がその背景にある。

我々は、この慢性肝炎の発症に、免疫システムによる間接的な細胞傷害に加えて、HBVのX蛋白質による直接の細胞傷害が関与すると考え研究を行っている。X蛋白質は主にミトコンドリアに結合し、これを凝集させ、細胞死に特徴的な変化(チトクロームCの 放出、膜電位の低下など)を誘導した。加えて、細胞膜の変化(ブレビング)、DNA鎖切断が起こることも観察した。

 即ち、X蛋白質が直接に細胞死を引き起こし、慢性肝炎の発症原因の一つになり得ることを示した。さいごに、細胞回転(細胞死ー再生過程 の繰返し)の促進とがん化誘導との関係について考察する。

3.HCV感染の自然経過と肝発がん
                  千葉大学第一内科 横須賀 収
 C型肝炎ウイルス(HCV)感染者は本邦における肝がん患者の約7割をしめている。 HCV 感染者の自然経過では、急性肝炎後、約6-8割は慢性化し、線維化の進展ととも に肝硬変へと病像の発展がみられ、肝がんの発生率も上昇がみられる。HCV はいった ん慢性化した後には消失することは希である。なおトランスアミナーゼの高値持続例 では病変の進行は速い。IFN 治療によりウイルス消失がみられた場合には肝内線維は 徐々に吸収され、発がん率も低下する傾向がみられる。また、近年新しい肝炎ウイル スとしてTTV、HGVが報告されているが、それらと肝疾患の関係は少ないものと考えら れる。

4.胃MALTリンパ腫とHelicobacter pylori
             四国がんセンター 内科 土井俊彦
 Wotherspoon&s_comma;IssacsonのH.pylori除菌による胃MALTリンパ腫退縮の報告以来、胃悪 性リンパ腫(MALTリンパ腫)の腫瘍としての概念、治療方針は、大きく変化した。反応性増殖と腫瘍の質的な差は何であるのか、腫瘍も病因を除去する事で治癒しうるのか、種々の問題が未解決である。まず解決すべき問題は、腫瘍B リンパ球を特定検出する方法を見出す事である。

 現在検討しているtelomerase活性を中心に分子生物学的マーカーからのアプローチについて述べてみる。