新年明けましておめでとうございます。1999年という、20世紀最後の年が始まりました。今年が、21世紀に向け、さらなる飛躍の年となりますよう、お祈り申し上げます。

 21世紀は、生命科学の時代といわれています。それをまず象徴するのが、ヒト・ゲノムの全DNA塩基配列の決定です。98年には、ヒト・ゲノムの全DNA塩基配列を3年以内に解析することを目標としたベンチャー企業が設立され、ヒト・ゲノムの解析が、ビジネスの対象として大きくクローズ・アップされました。狙いは、ヒト・ゲノムに存在する1塩基多型(SNPs)です。1塩基多型は、糖尿病や高血圧など多因子が関連している疾患の遺伝学的な理解に役立つだけでなく、創薬ターゲットの絞り込み、ファーマコゲノミックス(ゲノム情報に基づく薬理学)の基盤となり、副作用の予測や、医薬品の有効性の判定に力を発揮するといわれています。この動きの背景にあるのは、マルチ・キャピラリーDNAシーケンサー、DNAチップなど、新しい研究支援機器の実用化によるゲノム解析能力の飛躍的な向上です。99年も、1塩基多型、ファーマコゲノミックス、機器に関連したニュースが、続々と出てくると思われます。
 また、ヒト以外にも、植物、病原微生物、産業用微生物などのゲノムの解析が着々と進んでいます。「○○○のゲノムの全塩基配列を決定」というニュースは、驚きをもって迎えられなくなってきています。ゲノム解析によって、何がわかったのか、何に役立つのかを明確にすることが、ますます重要になっています。
 
 このほか、98年のキーワードには、体細胞クローン、ES細胞が挙げられます。98年には、日本で続々とウシの体細胞クローンが誕生したほか、米国で体細胞クローン・マウスが誕生するなど、体細胞から個体が発生することは、もはや疑いようがない事実になっています。一方で、韓国でヒトの体細胞クローンの初期胚を作出し、大きな反響が起きています。また、ヒトES細胞の分離・培養に世界で初めて成功したというニュースもありました。
 生命科学の時代、ヒトは生命を操作する道具を手に入れる半面、その道具をどのように使うかを考えなければなりません。99年には、ヒトがどこまで生命を操作できるのか、倫理の問題について議論を深める必要があります。

 これらのニュースは、多くが海外から発信されたものです。99年には、日本発の、世界があっと驚くすばらしいニュースを発信したいと思います。本年もよろしくお願い申し上げます。(佐原加奈子)