エーザイが米国Isis Pharamaceuticals社と共同開発中だったAIDS患者のサイトメガロウイルス感染症治療薬fomivirsen(ISIS2922)の開発・販売権を全て、Isis社に返還したことが明らかとなった。ISIS2922は米国でフェーズIII臨床試験に入っていた。アンチセンス医薬の実用化のトップを走る医薬品だ。今回の決定の背景には、アンチセンス医薬に対する技術的な疑問ではなく、エーザイの研究開発戦略の絞り込みがある。同社が抗ウイルス剤の研究開発を縮小したあおりを受けた格好だ。Isis社は北米では自社開発を行う計画だが、わが国では共同開発先を求めている。

 ISIS2922は、サイトメガロウイルス(CMV)の増殖を抑制するアンチセンスDNA(ホスホロチオエート型DNA)。重症化したAIDS患者の大部分がCMVに感染、AIDS患者の失明の主因となっている。アンチセンス医薬の最大の問題は細胞への取り込みの少なさだが、ISIS2922は患者の眼球内に直接注射することで、局所のアンチセンスDNAの濃度を上昇、CMV感染細胞内への取り込みを促進することに成功した。この結果、アンチセンス医薬で唯一、フェーズIII臨床試験に入ることができた。97年内には臨床試験を終了、順調なら同年、米国食品医薬品局に申請する計画だ。

 90年からエーザイはIsis社と提携、93年にISIS2922を導入することを決定した。この契約では、エーザイは日本での独占販売権と、欧州と北米での共同開発権を得た。エーザイは臨床開発の費用を半分負担していた。今回の再契約の結果、エーザイは全ての開発権をIsis社に返却、Isis社がISIS2922を商品化した際には、ロイヤルティーを得ることになった。

 エーザイの脱落によって、わが国でアンチセンス医薬の開発を公表しているのは、7月11日に米国Lynx社と提携し、血管再狭窄防止アンチセンス薬LR-3280の共同開発に着手した田辺製薬のみとなった(日経バイオテク96年7月15日号16ページ参照)。

 Isis社は接着因子ICAM-1のアンチセンス医薬ISIS2302を腎臓移植、慢性関節リウマチ、乾せん、クーロン病などの慢性炎症性疾患の治療薬としてフェーズII臨床試験を米国で進めている。また、スイスCiba-Geigy社(合併後の新社名Novertis社)と共同で、ガン遺伝子のアイソタイプを抑制するアンチセンス抗ガン剤、ISIS3521/CGP64128AとISIS5132/CGP69846Aの臨床試験フェーズIに入ったところだ。

 詳しい情報は、日経バイオテク8月26日号に掲載する。


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●サイトメガロウイルス CMV AIDS アンチセンス医薬 契約更改●