米ニューヨーク証券取引所で、カナダの製薬企業Valeant Pharmaceuticals International社の株価が暴落し、話題となっています。同社の株価は今年7月には1株250ドルを超えていましたが、その後下落に転じ、現在は111ドルと、ピークの半分以下で推移しています。とりわけ10月後半の下落が激しく、10月16日の終値が1株177.56ドルだったのが、10月22日の終値の109.87ドルまで4日連続で大きく下落しています。

 10月後半に大幅に下落したのは、不正会計疑惑を指摘する調査リポートが発表されたからです。同調査リポートは、Valeant社が米Philidor Rx Services社などの薬局を利用して売上高を水増ししているとして、「第2のエンロンではないか」と指摘しています。これに対してValeant社側は疑惑を真っ向から否定していますが、そもそもValeant社はそのビジネスモデル自体も批判され、株価は下落基調にあっただけに、この先、どう展開していくかが注目されます。

 Valeant社をめぐる顛末は改めて日経バイオテクONLINEの記事でも取り上げようと思っていますが、同社はコンタクトレンズや眼科領域に強い米Bausch+Lomb社、フランスSanofi-aventis社(当時)の皮膚科領域の事業ユニットの米Dermik Laboratories社など、数多くのM&Aを通じて成長してきた製薬企業です。米Cepharon社や米Allergan社に対しては敵対的買収に失敗して話題になることもありました。そのビジネスモデルが批判されているというのは、買収を通じて手に入れた製品の価格を引き上げて収益を拡大している点です。今年9月には、米Turing Pharmaceuticals社が買収で手に入れた医薬品の価格を50倍以上に釣り上げたとして前米国務長官のHillary Clinton氏から指弾されて話題になりましたが、Valeant社も同様のやり方で批判されている製薬企業の1社なのです。

日経バイオテク10月12日号「World Trend米国」、買収でいきなり薬価が50倍に、
社会的批判浴びたTuring社
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20151014/187921/

 資本の論理に基づけば、このようなやり方もありなのかもしれませんが、本当にこれでいいのか、医薬品を患者に届けるという製薬産業の根本的な理念にもとっているのではないかと大いに疑問を感じます。

 ちょっと前に米Pfizer社の元マーケティング部長だったピーター・ロストという人が書いた「製薬業界の闇」という本を読んだのですが、そこには資本の論理に翻弄される製薬業界の内幕が描かれていました。医薬品は、マーケティング戦略や販売ネットワークよりもそもそもの製品が持つ価値が強いので、製品を手に入れることを目的にした買収(つまり、企業を買収した後、人や組織はリストラしてしまうようなやり方)が通用してしまうのではないかと考えさせられました。しかし、そのような買収戦略は果たしてどこまで続けられるのでしょうか。そのようなやり方が横行して、本当にサスティナブルな産業となり得るのでしょうか。

 米Phizer社が米Allergan社との買収交渉に乗り出したことも伝えられていますが、製薬産業と資本主義との関係がどうなっていくのかが非常に気になるところです。

                     日経バイオテク編集長 橋本宗明