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 さて、10月19日に第一三共は、米国での営業体制を変革し、2016年3月末までに1000人から1200人の人員削減をすると発表しました。米国で1000億円超の売上高を稼ぐ高血圧症治療薬オルメサルタンの特許が2016年にも米国で切れるため、先取りして組織をスリム化するわけです。

 オルメサルタンの特許切れというパテントクリフ(特許の壁)をどう克服するかは、第一三共にとって大きな課題となってきました。今年5月に行われた経営説明会でも、中山譲治社長は「オルメサルタンのパテントクリフの克服」を経営課題に挙げ、経口抗凝固薬のエドキサバンの育成や、それに続くパイプラインの充実に務めていると説明していました。ただ、エドキサバンは2015年2月に米国で発売にこぎつけたものの、2016年3月期の米国での予想売上高は20億円にとどまっています。このため、5月の段階では500人としていた米国での人員削減の規模を上積みして、構造改革を急ぐ決断に至ったようです。

 改めて言うまでもありませんが、パテントクリフは製薬企業の経営の安定化を大きく脅かします。とりわけ米国市場では、特許が切れた途端にジェネリックに市場を奪われ、売上高が10分の1程度にまで縮小する事例はざらにあり、米国市場で成功した大型品を有する企業ほど、より切り立った崖の縁に立たされることになります。このパテントクリフを克服するために、各社、次の新薬の開発を急ぎ、手当てができなければ他社との連携など様々な手を尽くして売上高の確保に務めるわけですが、場合によっては雇用にも手を付けざるを得なくなるということでしょう。

 今年6月に閣議決定した経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2015には、なるべく早い時期に後発医薬品の数量シェアを80%以上とすることが盛り込まれ、長期収載医薬品に対する風当たりが強くなる中で、日本市場でもパテントクリフの落差は大きくなっていくものと考えられます。これに対して対応を促すべく、厚生労働省は9月に「医薬品産業強化総合戦略」を発表し、今後一定の期間新薬の創出ができなかった製薬企業については「事業の転換等も迫られるのではないか」と言及しています。

 確かに、医薬品の特許切れによる売上高の減少は、消費者向け製品を扱う他の産業が直面する販売不振などと違って数年前から想定可能であり、事前に手を打っていくことも可能です。ただ、販売不振になったからと言って価格を引き下げることもできず、他産業に比べて打つ手が限られているのも確かでしょう。

 特許切れに伴う売上高の急落をどのようにして乗り越えていくか。米国市場に進出した大手製薬企業が直面してきた問題に、今後は内弁慶でやってきた中堅製薬企業も悩まされることになりそうです。少なくとも雇用が流動化していない日本では、特許が切れそうだからと言って人員削減するのも容易ではありません。日本の製薬企業が、新しいビジネスモデルの構築を迫られているのは確かです。

                       日経バイオテク編集長 橋本宗明