陽子線・重粒子線治療が先進医療からなくなる!?【日経バイオテクONLINE Vol.2332】

(2015.10.16 18:00)
久保田文

 こんにちは。三週に一度、メルマガを担当しています副編集長の久保田です。先日もお伝えしましたが、来春から、医薬品の開発を手掛ける製薬企業やベンチャー企業に無関係ではいられない2つの制度がスタートします。

 1つは、日本版コンパッショネットユース制度であり、実施中の治験の対象から外れた患者を対象とする「人道的見地からの治験」。もう1つは、保険外併用療養の1類型であり、患者の申し出を起点として、保険未収載の医薬品や医療機器、再生医療等製品を使った治療について混合診療を認める「患者申出療養」です。

 人道的見地からの治験は、あくまで治験の枠組みなので、厚生労働省医薬・生活衛生局審査管理課が担当し、患者申出療養は保険外併用療養なので、厚労省保険局医療課が管轄します。いずれの制度も、既に厚労省から骨格案が示されておりますので、詳細は以下の記事をお読みください。

厚労省、「人道的見地からの治験」で骨子案、先駆け希望品目や
希少疾病指定品目の医薬品では実施不可避か
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150918/187481/

厚労省、来春から始まる患者申出療養は癌領域の医薬品が中心か、
製薬企業と協議を開始へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20151015/187969/

 さて、今日の本題は、こうした取り組みと並行して進められている先進医療の整理の話題です。患者申出療養は、保険外併用療養の新たな一類型と位置付けられていることから、法改正が必要で、今年5月末に参院本会議で可決、成立した医療保険改革法案に盛り込まれました。実はその際、以下のような付帯決議が付けられているのです。

 「評価療養の中で実施されている先進医療、最先端医療迅速評価制度及び国家戦略特別区域での先進医療に加え、新たに患者申出療養制度が設けられることにより、保険外併用療養費制度がますます複雑化することから、制度の効率化を図るとともに、国民にとって分かりやすいものとすること」

 要は、先進医療Aとか、先進医療Bとか、先進医療Bの亜型とか、さらには今回の患者申出療養とか、いろいろあって国民に分かりにくいので、整理してください、という主旨です。付帯決議を受けて厚労省は現在、先進医療を整理すべく検討を進めているところですが、その一環として、長期間先進医療に留まって、保険適用の可否が決まっていない治療法についても整理を行う方針です。

 その候補として挙がっているのが、2001年から先進医療になっている陽子線治療と、2003年から先進医療になっている重粒子線治療です。両治療についてはこれまでも、保険導入の適否が評価されましたが、明確に有効という結論も、明確に無効という結論も出ず、十数年にわたり、ずるずると先進利用に滞留していたのです。

 滞留の背景には、評価に際して、陽子線治療(10医療機関)と重粒子線治療(4医療機関)を実施している個々の病院が症例数などを示すだけで、他の治療法の成績との比較などが行われず、結論が出なかったという事情もありました。そこで厚労省は、放射線腫瘍学会に直接これまでの治療成績の整理・評価を求め、保険導入の適否に結論が出るようなデータをまとめるよう要請中。次回の診療報酬改定までに、適否が決まる見込みです。

 陽子線治療や重粒子線治療は、治療費も高く、これまで先進医療の代名詞のように扱われていましたが、評価結果次第では、今年度いっぱいで先進医療から姿を消す可能性もありそうです。

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