動きだした細胞培養加工受託の新ビジネス【日経バイオテクONLINE Vol.2326】

(2015.10.07 18:00)
高橋厚妃

 皆さま、こんにちは、日経バイオテク編集の高橋厚妃です。このところ、再生医療新法の施行状況について、あちらこちらで取材しています。

 再生医療新法は、自由診療や臨床研究で行う再生医療を対象に、2014年11月に施行されたものです。各医療機関が自由診療として実施している、癌免疫療法などを含む再生医療について、従来は、国は関与していませんでした。しかし再生医療新法により、医療機関は、再生医療の提供計画を用意し、厚労省(地方厚生局)から認められた再生医療等委員会で提供計画の審議を受けなければならなくなりました。

 委員会での意見書を添えて、提供計画を厚労省(地方厚生局)に届け出て初めて再生医療が行えるようになったのです。ちなみに、猶予期間の終了は2015年11月24日ですので、それ以降に再生医療を実施する予定の医療機関の皆さまはどうぞ手続きを進めて頂きたいと思います。

 また新法では、臨床用の細胞を扱う細胞培養加工施設(CPC)についても、基準が定められることになりました。医療機関が保有するCPCについては、地方厚生局への届け出が必要で、企業や研究所など医療機関以外が保有し、医療機関外の建物にCPCがある場合は地方厚生局からの許可の取得が必要となりました。

 ここで注目するべきは、CPCの最低基準が定められて、届け出や許可制になったことで、医療で提供される細胞を外部の企業に委託できるようになったということです。企業による、細胞培養加工受託サービスが可能になったため、メディネットの木村佳司社長の言葉を借りるならば、「再生医療分野の新たな産業が生まれた」というわけです。

 厚労省から発表されている2015年8月31日現在の情報によれば、2064カ所の施設が届け出を行い、19カ所の施設が許可を取得しました。現在は、各地方で届け出や許可を受けた施設の数のみが公開されていますが、今後厚労省は、施設の同意を得た上で、施設名などの情報公開を行う方針です。

 このメールを執筆している10月7日現在では、まだ施設名の情報公開はされていません。取材を開始した当初、「19施設の内訳を明らかにする!」というモチベーションを持って取材を進め、19カ所のうち、11カ所は、企業が保有するCPCであることが分かりました。

「再生医療新法の受託ビジネスの全容解明、11社が特定細胞加工物製造の許可取得」
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20151001/187680/

「細胞培養加工受託に参入したピルム、受託コスト削減を目指す」
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20151007/187837/

「富士ソフト、アカデミアからの細胞加工受託に重点」
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150925/187571/

 許可を取得した狙いや今後の展望などについて各企業に取材を行い、このたび次号の本誌2015年10月12日発行号の特集で、「再生医療の新ビジネス」として取り上げました。

 詳細は、本誌をご覧いただきたいのですが、今回の取材を通して感じたことは、受託サービスが可能になったことで、アカデミア発のシーズの開発が進みやすくなるのではないか、ということです。アカデミアの研究者の方からは、「CPCの維持費がかかる上に人材不足であるため、アカデミアで新法の基準を満たしたCPCを運営するのは容易ではない」という声が聞かれます。

 また、「研究段階から、臨床応用を行う場合に必要となる標準作業手順書(SOP)の構築には、経験が必要であるため、アカデミアで行うのは困難だ。培養条件の検討などは、ルーチンな仕事で、大学での研究テーマとしては不向き」との声も聞き、企業からのサポートは、アカデミアのシーズ開発にとって重要であることが分かりました。

 さらに、「単なる受託だけではなく、開発の支援サービスなども同時に手掛けることで、企業はアカデミアが持つシーズに早期の段階からアクセスできる。アカデミアも企業もメリットがある」と指摘した研究者もいました。

 培養加工受託が可能になったことで、アカデミア発のシーズの実用化が後押しされることになるでしょう。培養加工受託を手掛ける企業は、それぞれ品質の良い細胞を製造できる技術やノウハウ、企業治験を行っている経験、培養加工受託の費用などで、アカデミアからのニーズをくみ取る必要がありそうです。

日経バイオテクONLINEメール2015

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