3週間に1回、金曜日のメルマガを担当している日経バイオテク副編集長の河野修己です。

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https://bio.nikkeibp.co.jp/article/information/20150930/187678/

 さて、ここからが本日の本題です。

 10月22日に東証マザーズに上場する予定のグリーンペプタイドが、上場前説明会を開催したので取材してきました。

東証がグリーンペプタイドの上場を承認、テーラーメード型癌ワクチンを開発、
富士フイルムに導出済み
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150915/187385/

グリーンペプタイドが上場前説明会を開催、「フェーズIIIはあと2、3年で完了する」
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20151001/187679/

 グリーンペプタイドは久留米大学発の創薬ベンチャーで、癌ワクチンを開発しています。同社の癌ワクチンは世界に例を見ないユニークなものです。抗原となるペプチドを12種類用意しておき、この中から患者に合わせて最低2種類、最大4種類のペプチドを投与します。投与前に患者の血液中に存在する抗体を測定し、それに合わせて投与するペプチドを選択します。つまり、個別化された癌ワクチン療法ということです。現在、去勢抵抗性前立腺癌を対象に、国内でフェーズIIIを実施しています。

 グリーンペプタイドの癌ワクチンについては、いくつか質問したいことがありましたので、この機会に永井健一社長に聞いてみました。主なやり取り以下の通りです。

――このワクチンは患者によって有効成分が異なる。PMDAはこのワクチンを単剤と見なしているのか。それとも合剤、あるいは併用療法と見なしているのか。
 「ずいぶん前からPMDAは単剤と見なしている。フェーズIIIで出てこなかった組み合わせも含めて、承認される」

 なぜこのような質問をしたかというと、このワクチンの臨床試験が始まった時に、各ペプチドが別々の医薬品なのかどうかという点で、議論がありました。もし別の医薬品ということになれば、理論的には組み合わせごとに承認を取らなければならないという事態さえ想定されました。グリーンペプタイドが長らく製薬企業と提携できなかった(現在は富士フイルムと提携している)のも、薬事上の位置づけに不透明感があったのが一因となっていました。今回の永井社長の回答で、この点については解決していることが明確になりました。ただし、承認後にどのような製剤とするのか(12種類全部を出荷してそのなかから投与するのか、それとも患者ごとに必要な分だけを出荷するのか)や、薬価の決め方(投与するペプチドの数が異なっても同じ薬価にするのかなど)は今後の検討事項になっています。

 もう1つの質問はこれでした。

―富士フイルムとの契約は、マイルストーンがフェーズIII終了時点で1億円、承認申請時点で8億円、承認取得時点で11億円、ロイヤルティーは5%、契約一時金は無いという内容である。この金額は、抗癌剤の契約としてはかなり安いのではないか。
 「2011年に富士フイルムと契約した当時は、免疫を標的とする抗癌剤はまだ注目されていなかった。そのため、この金額になっている。しかし、最近は数百億円から1000億円を超える規模の契約を締結した癌ワクチンが出てきている。間もなく米国で臨床試験を開始する予定のGRN-1201は、この規模の契約が期待できる」

 さて、米Dendreon社の「Provenge」を除いて、癌ワクチンの開発はことごとく失敗してきました。例えば、オンコセラピー・サイエンスは、当初、1種類のペプチド抗原で開発していましたが、最終の臨床試験で有意差を得られませんでした。次に、3種類の抗原でもやってみましたが、それでもフェーズIIIで失敗しました。武田薬品、GSK、Merck Seronoも痛い目に合っています。それほど、癌ワクチンの開発は困難を極めてきたのです。

 そこで、グリーンペプタイドの癌ワクチンに十分な有効性が見込める根拠についても、質問してみました。これについては永井社長は、「癌細胞は突然変異を起こすなどして治療薬から逃れようとするが、4種類の抗原を投与しておけば逃げられないと考えている」というものでした。

 いずれにしても答えはフェーズIIIが完了する2、3年後に判明します。日本の創薬ベンチャーから真に画期的な製品が生まれることを期待しています。(河野修己)