三週に一度、メルマガを担当しています副編集長の久保田です。

 何度もアナウンスさせていただいておりますが、ゲノム編集をテーマとしたセミナーの開催が、来週金曜日に迫って参りました。既に多くの読者の皆様からお申し込みをいただいておりますが、「ゲノム編集の創薬応用」という観点では、これ以上ない講師の方々にお集まりいただきますので、お時間がありましたらぜひご参加ください。

■■■セミナー概要■■■

―テーマ 「ゲノム編集が変える創薬」
 技術利用から特許まで、気を付けるべきポイントは?
―日時 10月2日(金)12時30分から

―会場 UDXカンファレンス(東京・秋葉原)

■■■講演者一覧■■■

―東京大学 濡木理教授
「ゲノム編集の技術開発のこれから(仮)」

―大阪大学 伊川正人教授
「ゲノム編集が変えた遺伝子改変動物の作製」

―エーザイ 相根康司主幹研究員
「創薬研究におけるゲノム編集技術の活用」

―志賀国際特許事務所 飯田雅人弁理士
「ゲノム編集のパテントマップと出願戦略における注意点」

■■■申し込みはこちらから■■■
http://nkbp.jp/1NWDfqf

 さて、本日の本題です。治験の対象から外れた患者に対し、治験中または承認前の新薬候補を提供する日本版コンパッショネットユース制度が、2016年度から国内でスタートします。厚生労働省は先週、同制度の骨子案を始めて公表しました。

厚労省、「人道的見地からの治験」で骨子案、先駆け希望品目や希少疾病指定品目の医薬品では実施不可避か
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150918/187481/

 同制度は紆余曲折あり、「人道的見地からの治験」という名称になりました。ご覧の通り、国内ではコンパッショネットユース制度を「治験」の枠組みで実施することになったのです。安全性を確保するため、というのがその大きな理由です。しかし治験である以上、実施企業は関連省令などを順守しなければなりません。骨子案では、「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」を改正し、治験薬の表示を緩和する案などが示され、大筋で了承されました。

 人道的見地からの治験を実施するかどうかは、基本的に患者や医師の要望を受けた企業が判断できることにはなっています。ただし、企業が実施しないと判断した場合、その妥当性について厚労省の検討会が協議。場合によっては、厚労省が改めて企業に実施を要望するとされており、単純に企業判断とも言い切れません。関係者の話では、「先駆け審査指定制度で指定された品目などでは実施は必須になるのでは」と言われており、革新的な新薬であればあるほど、本来の治験と人道的見地からの治験を並行して実施しなければならない状況になりそうです。

 加えて、省令などが緩和されるとはいえ、企業の負担は数千万円から数億円に上ると推計されています。大手製薬企業の関係者ですら「どの新薬を優先して開発するか重々検討した上で、経費を絞って治験を始めるのが一般化している今、患者数が読めない人道的治験を実施しなければならなくなると、正直きつい」という声が漏れてきます。特に懸念されているのはベンチャー企業。「革新的な新薬はベンチャー企業から出てくることが多い。大手の製薬企業ならともかく、ベンチャー企業で数億円の負担はばかにならないだろう」と前述の関係者は指摘します。

 厚労省は、人道的見地からの治験のための治験相談の費用負担を軽減するための予算などを確保する方向ですが、CROへの委託費用など、企業が持ち出しをしなければならなくなるのは必至。この制度は当面、新薬にのみ適用されますが、厚労省審査管理課の担当者は、「とりあえず新薬で制度の骨子案ができたということ」と話しており、今後、医療機器や再生医療等製品にも適用される可能性も否定できません。

 厚労省は、来月にも人道的見地からの治験に関する省令改正などを実施する見込みです。どの程度の新薬候補について人道的見地からの治験を実施しなければならなくなるのか、企業にとってどの程度の負担が生じるのかなど、制度の行方を見極める必要がありそうです。