1カ月ぶりにGreenInnovationメールでお目にかかります、日経バイオテク編集の 河田孝雄です。

 秋の連休シルバーウィーク明けの今日木曜日(2015年9月24日)は、仙台市の東北大学川内北キャンパスに来ております。

 このキャンパスでは今週、3つの学会が重なって開催されます。火曜日(9月22日)から金曜日(9月25日)まで平成27年度日本水産学会秋季大会、木曜日(9月24日)から土曜日(9月26日)まで日本遺伝学会第87回大会、金曜日から日曜日(9月27日)まで2015日本放射化学会・第59回放射化学討論会です。

 3つめの放射化学会は「福島事故関連」というセッションから始まります。ヌクレオチドDNA切断に関連する発表も、この放射化学会であります。

 遺伝学会では、ワークショップ3「どこから来たのか、そしてどこへ行くのか~ヌクレオチド損傷をとりまく仕組み」が今日あります。

 近くノーベル賞の受賞が確実視されているゲノム編集技術CRISPR/Cas9系の発表が、遺伝学会や水産学会で目立ちます。

 ゲノム編集技術の活用は、前回のメールにも記載しましたが、マウスやラットと同じく、受精卵にツールを注入してゲノム編集を行える水産分野でも、活発に取り組まれています。

 マダイやクロマグロに続き、トラフグでの取り組みを、日経バイオテクの連載「機能性食材研究」の第21回にてまとめました。日経バイオテク2015年9月14日号に掲載しています。ご覧いただければと思います。

[2015-2-18]
日経バイオテク2月16日号「機能性食材研究」(第14回)、マダイ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150218/182626/

[2015-8-20]
日経バイオテク8月10日号「機能性食材研究」(第20回)、クロマグロ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150820/186930/

 今回のメールでは、先々週の9月11日に農林水産省で説明会があった研究会の報告書「ゲノム編集技術等の新たな育種技術(NPBT)を用いた農作物の開発・実用化に向けて」の話題も、お届けします。

[2015-9-11]
農水省農林水産技術会議、新たな育種技術研究会の報告書を公表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150911/187342/

 ゲノム編集技術のタイプを、SDN-1、SDN-2、SDN-3の3タイプに分け、このうち数塩基程度の変異を誘発させるSDN-1とSDN2については、「作出された農作物が最終的に人工制限酵素遺伝子(外来遺伝子)を有していないことを確認できれば、慣行の突然変異育種法によって作出される農作物とみなすことができるため、特段、生物多様性影響に関し、懸念すべき事項はないと」と、研究会は判断しました。

 上記の3タイプは、「ゲノム上の標的部位で切断された2本鎖DNAが、宿主の細胞中で修復される過程」を経た結果、どうなるかによって分けられます。

 SDN-1は、修復でエラーが生じて1または数塩基程度のランダムな変異(塩基の置換または挿入、欠失)が発生することを期待するタイプ。

 SDN-2は、標的となる塩基配列に相同的な短いDNA断片(鋳型)を人為的に合成して切断の際に人工制限酵素と合わせて導入することにより、1または数塩基程度の変異を計画的に誘発させるタイプ。

 そしてSDN-3は、数千塩基対程度のトランスジーン(交雑可能な同種または近縁種由来ではない遺伝子)を含む長いDNA断片を相同な配列で挟む形で導入することにより、ゲノム上の標的部位に当該DNA断片を形成させるタイプ。

 ぜひ報告書で詳細をご覧ください。

http://www.s.affrc.go.jp/docs/press/150911.htm

 この農水省の研究会の報告書は、“育種”が長く用いられてきた植物を対象としたものですが、ゲノム編集技術は、マダイやクロマグロ、トラフグなどの水産分野での“育種”にも大きなインパクトがあります。

 仙台での発表内容は追って、報道してまいります。