皆様こんにちは。日経バイオテク編集長の橋本宗明です。

 先週金曜日に日本の感染症対策を大きく変える可能性がある決定がなされたので、取材してきました。これまで海外で発生した感染症に対する日本の政策は、病原体の国内への侵入を防ぐ水際対策一辺倒でやってきた感があります。もちろん、水際対策にもそれなりの意義はあると思いますが、一方で来日する外国人が年間1000万人を超え、日本人の出国者も1700万人に達するというこのグローバルな時代に水際対策だけでどこまで効果があるのか疑問もあります。何よりも、感染症が日本にさえ入って来なければ、日本人が感染しなければ「よし」としているようで、「水際対策」という言葉にはあまり快くない印象も感じていました。

 そんな日本の感染症対策を転換する可能性があるというのは、「国際的に脅威となる感染症対策の強化に関する基本方針」というものが関係閣僚会議で決まったからです。

 基本方針で「重点的になすべきこと」とされているのは、1つは「発生国等に対する積極的な対応の強化」で、感染症発生国に対して緊急援助隊や感染症対策チームを派遣して人的支援を行ったり、世界保健機関(WHO)に頼らずに自らも海外情報を収集・分析してリスク評価ができる体制を構築する、途上国の保健システムの強化をサポートするといったことが挙げられています。実は、西アフリカでのエボラ出血熱の発生に際して、日本は資金面では、支出済みベースで米国、英国に次ぐ金額を提供していますが、政府が派遣した人数は20人で、米国の3800人、中国の800人、英国の750人などに比べてほとんど貢献できていません。「日本は人道的支援の観点から資金協力、物的協力、人的協力などを行ってきたが、欧米先進国は、自国への波及防止という観点から対応を行っていることが認識された」旨が、基本方針の中に書かれています。つまり、「国内に入った時にどうするかだけでなく、海外で抑え込んでいく」というのが従来の感染症対策と大きく異なる点です。

 もう1つは「危機管理体制の強化」で、国内での感染症防止対策として、病原体の検査・研究体制の強化や、感染症情報の国民への提供の推進などが挙げられています。8月には国立感染症研究所村山庁舎の施設がバイオセーフティーレベル(BSL)4の研究施設に指定されましたが、これ以外にも複数の施設の整備することも検討されています。ネグレクテッドディジーズとされてきた感染症に対する治療薬や診断技術、ワクチンなどの研究開発が促進されることも期待されます。

 そして3つ目がこうした国内外での感染症対策に取り組む「人的基盤の整備」です。

 来年の伊勢志摩サミットの開催に向けて、政府は「平和と健康のための基本方針」を策定するなど、健康・医療分野での国際協力に積極的に取り組む方針を打ち出していますが、感染症政策でも国際的な存在感が高まることを期待します。

健康・医療戦略推進本部、平和と健康のための基本方針を決定
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150914/187350/

                     日経バイオテク編集長 橋本宗明