昨日は弊社主催の創薬スクリーニングセミナーを開催いたしました。読者の中にはご参加いただいた方もいらっしゃるかと思います。御礼申し上げますとともに、ご感想やご意見、ご批判がありましたら是非お寄せいただければ幸いです。

 また、告知ですが、日経バイオテクでは、10月2日(金)にセミナー、東京・秋葉原にて日経バイオテクセミナー「ゲノム編集が変える創薬―技術利用から特許まで、気を付けるべきポイントは?」を開催します。是非ともご予定をいただければ幸いです。

セミナーの詳細は以下のサイトをご参照下さい。
http://nkbp.jp/1NWDfqf

 さて、先日、名古屋大学環境医学研究所教授の澤田誠氏に取材のお時間を頂戴しました。古くは、血液脳関門を通過するペプチドを複数単離し、それをもとにしたベンチャー企業を設立していますが、こうしたペプチドを同定できたのも、澤田氏はグリア細胞に注目されているからでした。

名古屋大環境医学研の澤田氏、Aβの脳内分布を3次元測定できるシステムを
開発、脳内の蛋白質発現と薬剤の分布から脳機能解明や創薬応用を目指す
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150914/187380/

 人間の脳は自分に必要な情報だけを取得すると言います。生命の大原則、つまり自己の保存、種の保存という前提があり、目や耳、鼻などの五感から入力された情報は、この生命の大原則に則って「より好ましい」「より危険」という情報を付加されていると言います。そして、情報が付けられた結果、快の情動や不快の情動として、より振れ幅の大きい情報のみが脳に保存されるといいます。付加情報の幅が小さい情報は脳には残らないそうです。振れ幅の大きい付加情報が付いた、いわばポイントの高い情報は良い悪いにかかわらず保持され、ポイントの低い情報は廃棄され、こうして取捨選択して蓄積した情報をもとに、脳は目の前に起こったことに対してシミュレーションを行い、行動を起こすための指示を出すそうです。コンピューターには生命の大原則がないので入力された情報に付加情報を付ける仕組みがありません。そのため大原則を与えなければいけませんが、その理論的背景がないために大原則を与えることができず、コンピューターには人間らしさがまだないようです。

 澤田氏によれば、こうした情動にグリア細胞が関わるのではないかということでした。しかもこうしたグリア細胞の一部は体外で調製したものを血管に投与することで脳内にまで到達するそうです。

 澤田氏は、血管から注入したグリア細胞がどのように入っていくかを動画で撮影したいと思い、自作で顕微鏡を作っています。血流は流れが速いため、1秒当たり2000フレームぐらい必要だそうで、高速度カメラを入れました。速度が速いと蛍光が弱くなるのでインテンシファイア(増強装置)を入れました。血管は曲がっているのでコンフォーカル(共焦点)を入れて、1つの光学断面を見ていても細胞が通過するのは一瞬なので断層撮像ができるように装置を入れて、焦点距離が長くなるように特注のレンズを作ってもらって、細胞をマウスに注入するためのステージとマイクロインジェクションを設置して。。。と。教授室にあったのは私の背丈よりも高くなった顕微鏡でした。澤田氏によると1秒当たり4000フレームで細胞を見ると、とても面白いものが見えてくるそうです。

 見たいものを見るために、時には特注部品を手に入れ、時には自作して装置をくみ上げる。昔はアカデミアに工作室があり、部品を自ら作る環境が整っていたそうです。あるベテランの分析系研究者には、今は自ら部品を作る意気込みに欠けるため、研究の独自性が失われがちだ、というお話しを伺ったことがあります。あるいはある製薬企業のスクリーニング系研究者には、今はどの会社も検出系にキットと市販の装置を使うので、どこでも似たようなものしか得られない、というお話しを伺います。

 道具はあくまで道具であって、独自の発想を持ち、道具を使いこなすことで新しい現象を見出すことが大切ですが、今後、道具を作り出す研究者にたくさんのお話しを聞いて、道具を使う研究者とのコラボレーションが生まれればと感じているところです。

日立製作所名誉フェロー神原氏、今明かすライフサーベイヤー設立の経緯、
今後は個体を理解するためのツール開発を進めたい
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150726/186500/

                         日経バイオテク 加藤勇治