3週間に1回、金曜日のメルマガを担当している日経バイオテク副編集長の河野修己です。

 毎年、取材しているアジア細胞治療学会学術集会ですが、今年は8月20日から3日間、韓国・光州市で開催されました。日経バイオテクオンラインには9本の記事を掲載していますので、是非、ご覧下さい。また、来週月曜日発売の日経バイオテク9月14日号にも、リポートを掲載しています。

韓国でアジア細胞治療学会が開幕、MERSの影響受けるも600人が参加
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150821/186972/

ACTO2015、Yonsei Universityの研究チーム、血友病A患者の遺伝子をゲノム編集で改変
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150824/186987/

ACTO2015、下坂理事長がアジアにおける細胞治療の実情を解説
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150824/186988/

ACTO2015、他家軟骨再生医療製品「CARTISTEM」の治療成績が報告される
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150824/187012/

ACTO2015、MSCがMSやALSに有効の可能性
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150826/187048/

ACTO2015、東大医科研病院の小澤院長が組換えMSCによる癌治療を提唱
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150827/187062/

ACTO2015、鼻腔粘膜の再生医療、5例実施で良好な結果
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150828/187088/

ACTO2015、リスクベースで細胞治療を規制するシンガポール
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150830/187112/

ACTO2015、2016年に細胞治療のガイダンスを発行するタイ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150831/187142/

 さて、韓国はアジアの中では細胞治療大国です。日本では薬事承認された製品はまだ2つですが、韓国では13製品もあります。また、実施を許可された臨床試験も103に達しています。

 この差を生んでいる大きな要因は、2つあると見ています。1つは、細胞ソースの入手体制が確立されていること。韓国では民間企業による臍帯血バンク運営が普及しており、臍帯血由来の細胞が細胞治療に広く使用されています。臍帯血由来の他家間葉系幹細胞(MSC)を有効成分とする「CARTISTEM」は2012年1月に承認された細胞治療製品で、変形性関節症の治療に使用されています。CARTISTEMの使用実績はこれまでに3000人を超えていますが、安定した細胞供給源が無ければ不可能な数字でしょう。日本では臍帯血バンクを民間企業が運営すること自体に社会的な拒否感があり、集めた細胞の商業利用は容易ではありません。

 もう1つの要因は、細胞治療のリスクに対する許容度ではないでしょうか。例えば、今回のACTOでは他家NK細胞の臨床試験の報告が、韓国の研究チームからありました。他家NK療法については、その臨床試験の実施に反対する研究者もいます。他家NK自身が患者の免疫反応の対象になり、ただでさえ弱体化している癌患者の免疫能力をさらに疲弊させる可能性があるからです。一方で、自家NK細胞より他家NK細胞の方が腫瘍に対する攻撃力が高いとする意見もあります。ある研究者は、「韓国の規制当局にどっちか分からなかったらとりあえずやってみろというイケイケな体質がある」と指摘します。東京から飛行機でわずか2時間の隣国ですが、規制当局の思想は大きく異なっています。