アグリバイオ最新情報【2015年8月】のハイライト
       ISAAA日本バイオテクノロジー情報センター(NBIC)の冨田房男代表

8月のハイライト

 国連食糧農業機構(FAO)は、2015年7月に主要な食料品の価格が約6年前、2009年9月以来、最低となったと報告した。これも遺伝子組換え(GM)作物、特に南米からの輸出によるところが大きい。安定した価格が維持されることは望ましいことである。

 一方、スコットランドでは、2015年8月9日にスコットランド農村地域・食品・環境省の官房長官であるRichard Lochhead氏が、欧州連合(EU)で唯一承認されているGM作物である害虫抵抗性トウモロコシの作付けを禁止すると表明した。彼はまた、欧州食品安全機関(EFSA)によって評価中の他の6つのGM作物の使用を許可しないだろうとも述べた。声明では、禁止の理由を「我々のきれいで、グリーンな状況を強化するため。」としている。全く科学的根拠の無い政策で、英国の28の科学機関が、スコットランドのGM作物の禁止について大きな懸念があると声を上げているのは、当然の動きだ。

 また、元米国務長官顧問Nina Fedoroff氏は、GM技術は安全で、世界の食料安全保障にとって最も重要であると語っている。「現在の収量増加傾向は、増大する需要に追いつくのには不十分であり、より多くの作物をより少ない水、エネルギー、化学薬品を使用して、同じ面積の土地で生産しなければならない」としたのも、私にとっては当然の発言だ。

 バイオテクノロジーを擁護する母親たちが、遺伝子組換え反対の著名人らに対して、GM製品の表示義務の支持の姿勢を再検討するように呼び掛ける声明を出したのも興味深い。「あなた方は、『私たちの食べ物に何が入っているかを知る権利を持っている』と言っている。しかし、GMOに由来するとの表示は、何が製品に入っているかは何も伝えていない。遺伝子工学は育種法の1つであって、製品ではない。それはボウルにすくいこんだ成分ではない。例えば、GMO甜菜から作った砂糖は、ただのスクロースであり、そこには、それ以外何も入っていない。それはちょうどサトウキビから作った砂糖と同じである」と声明で述べているが、これも当然なことだ。

 我が国のGM表示制度も、全く意味のないものであるどころか、「不信をあおる何ものでもない」ことにもう気がついてよい頃だ。我が国の科学者も母親も何も声を上げないのは全く不思議なことだ。日本の平和ぼけ、飽食ぼけに大きな懸念どころか危惧を感じている。

現在、いわゆるNBT(新育種法)をどう規制・管理するかの議論があると聞いているが、以上のことから明らかなように「プロセス」規制ではなく、「プロダクト」規制が大事なことは明白だ。国民も政府もこのことにしっかりと考えてほしい。特に政府は、食品の安全性をどう試験すべきかをしっかりと進めてほしい。農業・食品産業技術総合研究機構の研究員には、GM作物の検出法をレビューするよりは、食品の安全性試験がどうあるべきかの論文を書いてもらいたいものだ。

世界
食品価格指数は2009年以来最低に

アフリカ
GMOに関する答えでミスウガンダ2015が決定
ケニアの副大統領、GMOの禁止はすぐに解除すると発言

南北アメリカ
米国バイオテク作物同盟は商業化の可能性を議論
遺伝子組換えを推進する母親たち、GMO反対の著名人らに呼び掛け
元米国務長官顧問がGM技術は安全で食料安全保障にとって最も重要と発言

アジア・太平洋
GM技術は気候対応型農業のために不可欠
オーストラリア上院議員、GM作物支援を表明
オーストラリアOGTR局がQueensland大のGMサトウキビの圃場試験を承認
英国TCAGはベトナムでより良い品種の開発を進める
台湾政府、経済成長の鍵をバイオテクノロジーと認識
インド首相は農業の技術革新を求めている
「GMトウモロコシを栽培するかは農業生産者の選択肢」とベトナムの学者
フィリピンのバイオテク研究者ら知財管理の研修受講

ヨーロッパ
欧州の植物バイオテクノロジーの社会受容に関するレビュー
天然の糖の増加が旱魃下でのトウモロコシの収量を向上
スコットランドのGMO禁止に科学機関が反対表明

文献備忘録
国別バイオテックの現状と傾向
種子のいのち―GMO種子を解説するビデオ