まず告知をさせていただきます。日経バイオテクでは、9月15日に、品川駅近くのコクヨホールにて、「創薬スクリーニングに革新をもたらす最新技術、一細胞解析で明らかになる新たな生命像を、創薬スクリーニングに取り込む方法」をテーマにしたセミナーを開催します。何度か告知をさせていただいているので、既にお申し込みいただいた方もいらっしゃるかと思いますが、アカデミアのエキスパートに講演いただいた後に、製薬企業のエキスパートを交えて行うパネルディスカッションはとても興味深いものになると期待しています。是非とも皆様の9月15日のご予定をいただければ幸いです。

 セミナーの詳細は以下のサイトをご参照下さい。
http://nkbp.jp/1fmcD4R

 さて、現在、アカデミア創薬について取材を進めています。たくさんの方々にお話をお聞かせいただく機会を頂戴しておりますが、ふと弊社が発行している米Amgen社の経営についてまとめている弊社発行の「世界最高のバイオテク企業」の一文を思い出します。

 「世界最高のバイオテク企業」の詳細はこちらをご参照ください。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/information/20150406/183745/

 この書籍で、Amgen社が、EPOについてGenetics Institute社(GI社、当時)と特許紛争になった様子が書かれています。曰く、「GI社は、GI社の科学者がEPOを最初に見つけたと主張した。訴訟の中で、行政官はアムジェンの研究者がEPOを発見した正確な日付を決定した。我々が勝ったと私は確証した。GI社の“発明者”は当時GI社の社員になっていなかったのだ。だが、この明らかに乗り越えられない証拠にも証言者は全く動ぜずに、宣誓して言った。『私はGI社での就職面接の時にEPOを発見しました』。次に面接を行ったという人物が証言台に立って、その科学者はGI社の福利厚生と休暇方針について質問している間にEPOを発見したと証言した」

 どうでしょうか。本当の本当にそう言ったのか? と思いますが、そう思うほどに少々驚く証言です。ただ、この紛争で勝つか負けるかで巨額な売り上げを手にできるかできないかが決まります。その分かれ目ではこんな証言が出てくるのかも、と思った次第です。

 さて、アカデミア創薬に関わる研究者にお話を伺うと、「リード化合物を薬にするには、ヒットした後、とことん合成展開し、構造活性相関をとって強い特許にしなければならない。こうした研究は製薬企業が得意だ」と一様に仰います。一方で、「今までアカデミアは、標的に対して一定の効果を示す化合物を見出したら、それをすぐ特許として出願してしまったため、結果的に弱い特許にしかならなかった」とも言います。

 なぜ弱い特許にしかならないのに出願してしまったのか。アカデミアの研究者は、標的に対して効果が認められた化合物はそれがすぐ医薬品になると思い込んでいたこともあるようですが、同時にこの頃、アカデミアも権利確保すべきという風潮が起こり、どこもかしこも技術移転機関が設立されて、いきおい、弱い段階なのに出願させられたことも背景にあったようです。

 しかし今のアカデミア創薬においては、なんとしても薬につなげるという意識があり、中途半端な特許出願はせず、うまく技術移転するんだ、という意識が生まれてきているそうです。製薬企業に勤務されていた方が今たくさんアカデミアに移られたことも影響しているかもしれませんが。

 アカデミアの権利確保意識が高まっているわけですが、おかげで強い特許を企業が手に入れるチャンスが増えてきたわけです。しかし、いざとなるとGI社のような証言をしてしまうほど細かいところで“競争”をしてしまうのでしょうか。一方で、今やファーストインクラスがベストインクラスと言われるほど、第2世代、第3世代と称して活性の高いものを出すことが難しくなってきた時代です。アカデミアが大きく変わってきている今、それを世に出す役割を期待されている製薬企業も挑戦がますます求められるようになってきたと感じています。

                         日経バイオテク 加藤勇治