機能性表示食品に見るサイエンスに対する看過できない不誠実さ【日経バイオテクONLINE Vol.2289】

(2015.07.24 18:00)
河野修己

 3週間に1回、金曜日のメルマガを担当している日経バイオテク副編集長の河野修己です。

 本日から開催中の日本遺伝子治療学会学術集会を取材するため、大阪にやってきました。今年の大会長は大阪大学の森下竜一教授です。

 さてこの森下教授が旗振り役となって4月に新規導入されたのが、「機能性表示食品」という制度です。特定保健用食品(トクホ)は臨床試験データを基に申請を行って国の承認を取得しなければならず、時間と金がかかり過ぎるとの批判がありました。

 一方、機能性表示食品は、ピアレビュー付きの学術誌に論文が掲載されているなど事業者自らが機能性の根拠を示し、届け出を行うだけで機能性表示が可能になるという制度です。国による審査はありません。ただし、事業者は何を根拠としているかを具体的に開示しなければならず、この点はトクホよりも優れていると評価されていました。

 7月15日時点で消費者庁に届け出があったのは全部で56件。届け出から60日で販売可能となるので、既に幾つもの商品が売られています。読者のみなさんも、テレビや中吊りで機能性表示付き商品の宣伝広告をごらんになったことがあるでしょう。

 この機能性表示食品に対して、本誌連載「Food Science」の著者である松永和紀氏が数々の問題点を指摘しています。

 松永氏らは6月中旬に、その時点で情報が公開されていた機能性表示食品36製品を調査しました。すると、13製品に問題が見つかったのです。以下、松永氏らが運営しているFoocom.netの記事を参考にします。

 松永氏が問題有りとしている代表的な製品が、ファンケルが販売している「えんきん」です。その販促用サイトには、「本品にはルテイン、アスタキサンチン、シアニジン-3-グルコシド、DHAが含まれているので手元のピント調節機能を助けると共に、目の使用による肩・首筋への負担を和らげます」と書いてあります。

 その根拠となっているのが、48人を解析対象(えんきん群24人、プラセボ群24人の二重盲検試験)とした臨床試験。ピント調節機能は調節近点距離という手法で評価していますが、片目ごとではえんきん群とプラセボ群に差は無く、両目で試験してようやく有意差有りという結果になっています。肩・首筋への負担については、アンケート調査で「いらいらする」「ものが二重に見える」「頭が重い」「頭痛がする」など15項目について質問し、回答を定量化。その中で有意差があった「肩や首の凝り」を機能性として採用しているというありさまなのです。50人ほどの小規模な臨床試験で15項目も調べれば、偶然、有意差がでる項目があっても不思議ではありません。さらには、各項目の解析対象人数がばらばらなのに、なぜそうなっているのか説明がありません。松永氏はこの論文について、「頭を抱える代物。論文の質が、一言で言えば低い」と評しています。

 Foocom.netにはその他にも問題のある製品について詳細が記してあるので、時間のある方はご覧になってください。
http://www.foocom.net/

 松永氏が指摘している問題のタイプは、「都合の悪い情報は無視して都合のよい情報だけを強調する」「臨床試験を実施しているとしても被験者数が少なく、エビデンスのレベルが低い」「有意差があっても臨床的な意義があるとは思えないほど小さい」「安全性が十分に検討されているとは言えない成分が存在する」とまとめられます。

 こうした事例は機能性表示食品として届けられている製品の一部なのかもしれませんが、6月中旬の時点で36品目中13品目に問題ありと見なされているのは、かなりの割合と言わざるを得ません。

 「仏作って魂入れず」。サイエンスをマーケティングツールとしか見なさず不誠実に対応する企業が今後も増えるようであれば、規制緩和を実施してせっかく導入した新制度もいずれは消費者からそっぽを向かれるか、政府が規制強化に乗り出してくるのは、火を見るより明らかです。

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