こんにちは。日経バイオテク編集長の橋本宗明です。

 以前よりメールマガジンなどでお伝えしてきました「日経バイオテク投資セミナー2015」はいよいよ今度の日曜日に東京・品川で開催となります。まだお申込みいただいていない方は、ぜひお急ぎお申し込みをご検討ください。

http://ac.nikkeibp.co.jp/nbt/0718kabu/

 また、9月15日にはやはり東京・品川のコクヨホールで、「創薬スクリーニング」をテーマとするセミナーを開催します。「一細胞解析で明らかになる生命像を、創薬スクリーニングに取り込む方法」という副題をご覧いただければ分かる通り、一細胞解析の最新の技術革新にスポットを当てながら、これが創薬スクリーニングにどのようなインパクトを与えるのかという、「産業応用」に力点を置いたセミナーを開催します。登壇いただく先生方は、それぞれの分野の第一人者の方々ですが、パネルディスカッションには製薬企業の研究者にも参加いただき、創薬スクリーニングの現状の課題と、これに技術革新がどのように応えられるのかといった議論も行っていく予定です。製薬企業の研究者など、「創薬」に関わる人には必見のセミナーです。2カ月先ですが、ぜひ今からご予定ください。

 セミナー「創薬スクリーニングに革新をもたらす最新技術」の詳細は、下記のサイトをご覧ください。

http://nkbp.jp/1fmcD4R

 さて、昨日、メディデータ・ソリューションズという臨床開発の支援企業が開催したメディアセミナーを取材してきました。技術革新が医薬品開発を大きく変えていくのではないかと予感させる面白いセミナーでしたので、簡単にその内容を紹介します。

 メディデータ・ソリューションズは、臨床試験データなどをクラウドで収集・保管し、データ解析のソリューションなどを提供している米Medidata Solutions社の日本法人で、セミナーには米本社のGlen de Vries社長も参加していました。Medidata社は1999年の設立で、現在の従業員は1300人以上、今年度の売上高は4億ドル近くというから、臨床開発で扱うデータの規模がいわゆるビッグデータになってきたことを背景に、急成長を遂げてきた会社なのでしょう。

 昨日のセミナーのテーマは、このクラウドベースのデータマネジメントの話ではありません。FitbitやApple Watchというと既に手に取ったことがある読者もたくさんおられると思いますが、各種センサーを埋め込んだ腕時計型やパッチ型などの様々なウェアラブル端末が、既に登場しています。セミナーのテーマは、こうしたウェアラブル端末を利用することによって臨床試験が大きく変わることを示唆するものでした。

 昨日のセミナーで紹介された米Vital Connedt社の端末「ヘルスパッチ」は、心電図、心拍数、呼吸状態、体表面温度、姿勢、歩数、体動などを計測できるパッチ型のウェアラブル端末で、米FDAの承認やEUのCEマーク、日本でも医療機器として第三者認証を受けている製品です。こういう端末を臨床試験の被験者に利用してもらうことで、被験者が頻繁に医療機関に来なくても、客観的で連続的なデータをリアルタイムで取得できるため、臨床試験に伴う被験者の負担の削減や、臨床試験全体のコストも削減できるし、リアルタイムでデータをモニタリングすることで、試験方法を途中で改善したり、有害事象を早期に検知するなど安全性の面でも利点があるというのが昨日のセミナーの骨子です。

 もちろんウェアラブル端末でモニタリングできるデータには限りがあるので、被験者が医療機関に全く行かなくてもよくなるとは思いませんが、その頻度を軽減できるだろうし、ウェアラブル端末で計測できることを評価項目とすることで、新しい評価の仕方が考えだせるかもしれません。昨日のセミナーで一例として挙げられていたのは、被験者の行動範囲をGPSセンサーなどで計測することで、「ソーシャルエコノミックバリューも測定できる可能性がある」ということでした。あるいは循環器系の医薬品の臨床試験で、心電図を24時間リアルタイムでモニタリングできれば、少ない被験者で有用なデータが短期間で手に入るかもしれません。

 ウェアラブル端末というと、そのデータの信頼性や、常時身に付けることの煩雑さなどの問題がクローズアップされがちですが、臨床試験の中で、被験者に貸与するなどの形で使ってもらえれば、コンプライアンスよく使ってもらうことができ、その有用性などを検証するデータも集めやすい可能性があります。ヘルスパッチについては、今はまだ、実際に臨床試験の中で利用できるかを、Medidata社と一緒に実証試験しているところということでしたが、ウェアラブル端末を科学的に根拠のあるツールとして普及させていく上で、臨床試験の中で利用していくというのはいい手法のように思いました。また、こうしたツールが普及すれば、臨床試験のあり方、製薬企業と、被験者や医療機関との契約のあり方なども変わっていく可能性があると思った次第です。いずれにしても、デジタルヘルス、モバイルヘルスと呼ばれる分野の技術革新は要注目に違いありません。

                      日経バイオテク編集長 橋本宗明