隔週でメルマガを担当しています副編集長の久保田です。

 理研ジェネシス(東京・台東、塚原祐輔社長)が国内で初めて、米国のClinical Laboratory Improvement Amendments(CLIA)法に基づく、CLIAラボの認定を受けました。CLIA法の認定を受けることは、米国において、臨床検査の保険償還の必須条件となっており、自家調製検査法(Laboratory Developed Test:LDT)として特定の臨床検査ラボ内でのみ行われている高度化・複雑化した遺伝子検査などは、いずれもCLIAラボで実施されています。

理研ジェネシス、国内で初めてCLIAラボに認定
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150528/185204/

 今回理研ジェネシスがCLIAラボの認定を受けた背景には、遺伝子解析を伴う、グローバル治験(臨床試験)の存在があります。グローバルで臨床試験において腫瘍組織などの遺伝子解析を実施し、米医薬品食品局(FDA)にデータを提出する場合、CLIAラボで実施された遺伝子解析データを要求されるのが一般的。これまで国内にはCLIAラボの認定を受けた臨床検査ラボがなく、グローバル治験では、国外へ検体を送付して遺伝子解析を行うケースが多くありました。

 先日国立がん研究センターが立ち上げた癌ゲノムスクリーニングプロジェクト「SCRUM-Japan」でも、検体は当面、米ThermoFisher Scientific社の米国にあるCLIAラボに送付されることになっています。ただ、エスアールエル(SRL)を始めとして、CLIAラボ認定へ向け準備を進めている国内の臨床検査ラボは少なくない模様。今後、国内の臨床検査ラボに、CLIAラボの認定が広がるのは必至です。

国がん吉野氏、「SCRUM-Japanの臨床検体は2次利用も可能」
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150317/183249/

 もっとも、我々がこれから真剣に考えなければならないのは、実際の臨床検査や一般向け(DTC)遺伝子検査サービスなどで、高度化・複雑化した遺伝子検査などの品質をどのように担保するか。さらに、国内でどのようにLDTの枠組みを作るかということでしょう。健康・医療分野では、これまでの平均的な患者に対する標準医療から、遺伝子情報を含め個々の患者の状態に応じたPrecision Medicine(精密医療)への切り替えが進むことは間違いなく、あらゆる診断薬が個別の承認を取得するというのは、現実的ではありません。

 米国では現在、これまでCLIA法の枠組みで運用され、FDAによる承認が必要なかったLDTのうち、次世代シーケンサーを利用するなど複雑かつリスクの高いLDTについて、FDAが分析学的妥当性や臨床的妥当性を審査する方針を示しています。

 加えて、CLIAラボで実施されているDTC遺伝子検査サービスに関しても、一定以上の分析学的妥当性などを求める考えです。その一例が、FDAから承認された米23andMe社のブルーム症候群のキャリア検査であり、先日国内で開かれた第11回国際ゲノム会議では、FDAの医療機器・放射線保健センター(CDRH)体外診断薬・放射線保健室(OIR)のElizabeth Mansfield氏が、その承認までの経緯を説明しました。

FDAの担当者、米23andMe社のブルーム症候群のキャリア検査は
いかに承認を獲得したか?
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150522/185040/

米23andMe社、「これまでの利用者は95万人、約半数が北ヨーロッパ系」
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150522/185014/

 その講演を通じて感じたのは、医療目的であれそうでない目的(DTC遺伝子検査サービスのような)であれ、FDAが最も懸念しているのは、“リスク”だということです。そのリスクには、分析学的妥当性や臨床的妥当性が確保されていないリスクだけではなく、利用者が検査内容や検査結果を正しく理解していないリスクも含まれます。そのためFDAは、23andMe社に対して利用者の検査に対する理解度を調査することなどを求めました。遺伝子検査などを用いる診断は、Precision Medicineの出発点。そろそろ私たちも、国内でのLDTの在り方などについて、議論を始めなければならないのではないでしょうか。