こんにちは、日経バイオテク編集の高橋です。 先日、遺伝子治療などを手掛ける米bluebird bio社の布施紳一郎氏とお会いしました。布施氏は弊誌に寄稿をして頂いており、

2014年5月12日号の「リポート」米国バイオベンチャーの上場
https://bi.o.nikkeibp.co.jp/article/news/20140515/176304/
2015年3月2日・4月13日号の「リポート」ボストンから見た米国のバイオテクブーム
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150306/183000/
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150414/183892/
などの執筆者です。

 特に、3月2日・4月13日号のリポートは、遺伝子治療や話題のCAR-T細胞療法などに関連したボストンのバイオベンチャーを取り巻く様子についてご紹介頂き、たくさんの方にお読みいただきました。

 布施氏は、普段はボストンで活動されていますが、一時帰国に合わせて今回初めてお会いしたわけです。現在はbluebird bio社で、大学や大企業との提携の交渉を手掛けていますが、同社に入社する以前は、米国でバイオ企業のスタートアップに携わっていたことも。打ち合わせのはずなのに、自然と取材のようになっていき、「なぜ米国で仕事をすることになったのですか」と聞いてみました。

 「いや実は」と布施氏が言うには、当初は将来教授になるという心意気で、米Dartmouth Collegeの博士課程に進学しましたが、所属していた研究室の教授の研究内容が基になってベンチャーが設立されるなど、周囲でベンチャーの起業が相次いだため起業に興味を持ったそうです。Dartmouth CollegeはMBAコースも著名であることもあり、カリキュラムが充実。自主的に授業を受けて、全く素人だった経営などについても学んだそうです。その後は、数社のバイオベンチャーの起業に携わり、現在に至ります。ボストンのバイオ企業で、研究を行う方は少なくないかもしれませんが、ビジネスサイドで活動されている日本人の方は、まだまだ珍しいのではないでしょうか。

 布施氏の在籍した研究室のシーズでベンチャーが起業するなど、米国の大学では、起業のバックアップ体制が整備されているように感じます。私は、高校生の時に研修旅行で米Massachusetts Institute of Technology(MIT)を訪れたことがありますが、そこで聞いた講演の1つは起業をバックアップする立場の方による起業家精神についての話でした。「大学は勉強する場所。それなのになぜ起業のバックアップをする人が大学に在籍しているのだろう」と驚きながら疑問に思ったのが印象的で、今でもよく覚えています。

 そのエピソードを思い出していると、「特にMITの技術移転機関(TLO)の体制は整っている」と布施氏。例えば、MITのバイオの名物教授であるRobert S. Langer氏がアイディアを思いついた際には、アイディアの段階からTLOと連携し、特許を取るための研究の計画を練り始めるなど関係性が密接であるようです。大学からのシーズ導入に関連して、布施氏は日本の大学のTLOなどと付き合うこともあるようですが、お聞きするに、東京大学のTLOが最も米国のTLOの機能と似ているようでした。偶然にも、東京大学のTLOについては、次回の中谷智子弁理士の寄稿の連載記事で焦点を当てる予定ですので、どうぞご期待下さい。

 少し話が逸れてしまいましたが、現在ボストンではバイオベンチャーができては消え、を繰り返し、激動の環境のようです。激動のベンチャー企業を取り巻く環境を見つめられるポジションにいる布施氏の視点を生かせるように、皆さんに楽しんで頂ける記事を届けるための企画を考えていきたいと思っている今日この頃です。