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【日経バイオテク/機能性食品メール】
   【2015.5.15 Vol.188】
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 原則として毎週金曜日に「日経バイオテク/機能性食品メール」をお届けしております日経バイオテクの河田孝雄です。

 まずは、このところ金曜日お決まりとなっていた「機能性表示食品」の届出書受理のアップデイト情報から。今日5月15日は、追加公表はありませんでした。

 4月17日の第1弾公表で8件、4月24日の第2弾で3件、5月1日の第3弾で9件、5月8日の第4弾で1件、の合計21件の受理が、現在のところ公表されています。

 さて、昨日(2015年5月14日)から、第12回アジア栄養学会議(ACN2015)が横浜市のパシフィコ横浜で開幕しました。第69回日本栄養・食糧学会大会との合同開催です。50を超える国家・地域から、4000人が集まる見込みとのことです。

 昨日午後には、オープンングセレモニーが開かれ、色とりどりの衣装をまとった参加者が集まりました。おそらく民族衣装と呼んでもよい衣装もあったのでは。栄養学という学問分野の性格上、女性の参加も多いように思います。

 今日(5月15日)午後は、日本語シンポジウム1「食品の栄養・機能性表示」を取材しました。シンポジウム開始の15分より前に会場に移動したのですが、既に会場は立ち見の状態でした。残念ながら、会場が狭かったのですが、それにしても大人気でした。やはり2015年4月から「機能性表示食品」が施行されたことで、注目度が高まっているのです。

 講演者は4人で、いずれも大変おもしろかったです。まずは、名古屋文理大学健康生活学部の清水俊雄さんが「機能性表示食品の法制度と科学的根拠」、次いで国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所の石見佳子さんが「栄養表示と栄養素等表示基準値」、3番目に文部科学省科学技術学術政策局政策課資源室の河合亮子さんが「日本食品標準成分表について」、そして最後の4番目に国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所の梅垣敬三さんが「特別用途食品の背景と現状」でした。

 このうち、梅垣さんが講演で強調なさっていた、「疾病名を食品に明記できる唯一の制度である『病者用食品』制度をもっと活用すべき」には、賛成です。次のようなメールや記事で、その旨を記載しています。

[2013-7-26]
【機能性食品 Vol.103】魔法のキーワード「ストレス」、
医薬政策学と健康食品の制度化への障壁
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20130728/169854/

[2013-2-22]
【機能性食品 Vol.82】新発見「療法食」は外資9割、
規制改革会議で機能性表示制度を取り上げる
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20130222/166400/

[2012-2-21]
5年余りぶりで消費者庁移管後初の病者用食品(個別評価型)、
和光堂の乳幼児用経口補水液に「ウイルス性」表示
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120221/159697/

 企業がもっと利用したくなる制度に変えていくのには、どのような方策が必要
なのでしょうか。まずは「制度をよく知ってもらうことから」でしょう。

 その梅垣さんの講演で衝撃的な事実を知りました。病者用食品を含む特別用途
食品のエビデンスを整理して公表していたデータベース(DB)が、この3月末で閉
鎖されてしまった、という事実です。公開を続けるためのセキュリティー費用を
確保できなかったのが、閉鎖の理由とのことです。

 これはショックです。というのも、この特別用途食品のエビデンスDBは、「構
造化抄録」の重要性をかつて取材しました、東京大学の津谷喜一郎さんらが、た
いへんな努力の積み重ねで構築したものだからです。

[2009-4-21]
「特別用途食品の論文160報の構造化抄録、
連休明けにも栄研のウェブサイトで公開」と津谷喜一郎・東大特任教授
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/1537/

 2015年3月までは、独立行政法人国立健康・栄養研究所(栄研という略称があり
ました)が、この費用を負担して公開していました。この4月に独立行政法人医薬
基盤研究所と合併して、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所に改組さ
れました。

 この合併改組が、閉鎖の“きっかけ”になってしまったと推察できますが、そ
もそもは、特定保健用食品(トクホ)や病者用食品などの食品の機能性表示制度
が、それまで担当していた厚生労働省から、09年9月新設の消費者庁に移ったこと
が、原因になっています。

 「医薬基盤・健康・栄養研究所」という「・」(中ポツとも呼びます)が2つ入
った長めの組織名の国立研究開発法人は、厚労省の管轄です。

 厚労省がトクホや病者用食品を担当していたときは、栄研が食品の機能性エビ
デンスのDBを整備することは合理的だったのですが、いまやトクホや病者用食品
の主務担当省庁は、消費者庁なのです。

 消費者にも参考になるエビデンスDBの公開復活に向けて、なんとか消費者庁に
頑張ってもらいたい。というか、このエビデンスDBの構築には、当然のことなが
ら税金が使われていますので、国民の財産のはずです。何とも“もったいない”
と思います。年当たり数百万円程度の予算があれば、公開の継続はできるとのこ
とです。

 なお、栄研が構築している「『健康食品』の安全性・有効性情報(HFnet)」
のほうは、現在も公開が続いています。

https://hfnet.nih.go.jp/

 こちらも、栄研の予算の中で運営しているとのことです。健康食品の安全性対
策は、厚労省が管轄しており、優先順位が高かったのでは、と推察します。

 さて、津谷さんは、この4月から、東京有明医療大学保健医療学部の特任教授
に就任なさいました。

 実は、津谷さんのご異動も含め、この4月に異動なさった注目研究者の記事と
りまとめを4月上旬からしようとして先延ばしになってしまっています。ここで
何人か紹介させていただきます。

 東京大学大学院新領域創成科学研究科教授の服部正平さんは、早稲田大学に異
異動なさいました。東大も併任です。来週火曜日に服部さんの講演を聴く予定で
す。

[2014-9-3]
日経バイオテク9月1日号特集、「腸内フローラで宝探し」
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20140903/178784/

 国立医薬品食品衛生研究所生物薬品部部長の川崎ナナさんは、横浜市立大学に
異動なさいました。センター長と教授をおつとめです。

[2015-2-27]
【機能性食品 Vol.177】食品アレルギー対策先進国の日本、
新規アレルゲンデータベースは10周年
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150302/182876/

 京都大学教授の伏木亨さんは、龍谷大学に異動なさったことは、2月に報道し
ました。アジア栄養学会議の会場でも姿をおみかけしました。昨日は、東京大学
の阿部啓子さんの基調講演の座長をおつとめでした。

[2015-2-27]
京大農の伏木教授が4月に龍谷大に異動、「食の嗜好センター」を率いる
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150227/182855/

 さて、食品のエビデンスDBの閉鎖というと、同じ2015年3月末には、一般財団法
人医療経済研究・社会保険福祉協会(社福協)が、会員向けに2011年12月から公
開してきた「健康食品素材の科学的実証データベース(HFS)」サイトを、閉鎖し
ました。

[2015-4-10]
【機能性食品 Vol.183】5月31日にも登場の「機能性表示食品」届け出80件超、
国立研究開発法人取材デー
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150413/183883/

[2015-4-10]
社福協が健康食品研究啓発事業制度を発足、健康食品素材の科学的実証DBは閉鎖
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150409/183820/

 こちらは「税金で構築した国民の財産」には当たらないかと思いますが、
慶應義塾大学医学部出身の久保明さんや、今日のシンポジウムの演者をつとめた
清水俊雄さんらが率いる強力な文献調査チームが、多大な貢献をしたことを存じ
上げております。

 なお、久保さんは、2014年に、医療法人社団湖聖会銀座医院の院長補佐・抗加
齢センター長や常葉大学健康科学部教授に就任なさいました。

 こちらの機能性DBの活用も、ぜひ、社福協に検討してもらいたいです。可能で
あれば、消費者庁などの公的費用負担などにより、公開できないものか、と思い
ます。内容が充実しているだけに。

 栄研の「『健康食品』の安全性・有効性情報(HFnet)」は幸いなことに、引き
続き公開されていますが、機能性がどの程度期待できるのか、記載内容は難しい
ように思います。今日のシンポジウムでも梅垣さんが、一般の人向けにはなって
いない、とお話しでした。

 数年前のことですが、名医の金澤一郎さんが「見たけどよく分からない内容だ
った」と日本健康・栄養食品協会の記者向け説明会でご発言になったのを、昨日
のことのように覚えています。

[2012-9-7]
日健栄協、消費者庁トクホ審査基準検討会の座長は寺田雅昭氏、
機能性評価委員会の座長は金澤一郎氏
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120907/163130/

 食品の機能性に関する検討会などでは、必ずといってもいいほど、「機能性の
エビデンスのDBの整備が重要」という、当たり前の話が出てきます。しかも、で
きるだけ国民に分かりやすく、と。そして「新たにDBを整備を推進すべき」とい
う結論も盛り込まれたりします。

 でも「言うは易し、行うは難し」で大変な作業です。しかも、日本の場合は、
国民向けとなれば、論文の大半を占める英語の情報を、日本語にしなければなり
ません。

 この4月に始まった「機能性表示食品」の届出情報を、消費者庁が公開してい
て、この詳細には、「一般向け公開情報」もあります。

 「分かりやすい情報とはとてもいえないのでは」という感想を持つのは、私だ
けでしょうか。

http://www.caa.go.jp/foods/todoke_1-100.html

 まずは既に構築されているDBをネットワーク化し、そして公開に向けた取り組
みを推進する。「税金研究でDBは構築したが、予算がなくなったので更新できな
い、閉鎖する」という話は、ライフサイエンス系のプロジェクト研究ではたくさ
ん例があります。貴重な税金は、既構築DBの維持管理・更新にも利用していきた
いものです。

 食品安全委員会が発足したのは、03年7月なので、消費者庁と消費者委員会に比
べ6年ちょっと先輩にあたるようです。

 さて、今週のメールのもう1つの話題は、消費者庁と同じく内閣府と関係する
食品安全委員会です。今週水曜日(5月13日)17時から「報道関係者との意見交換会」
が開催され、報道関係者は20人近くが参加しました。

 「食品添加物」に関する説明があったのですが、あやふやな説明でした。初心
者向けという意味合いもあり、説明し得る内容に限度があるのは理解できるので
すが、食品添加物に詳しい専門家の立場で説明するのですから、「~といわれて
ようです」といった、表現を多用するのは、いかがと感じました。

 日本の食品安全行政の一端を担っている専門家としての発言に徹するべきと思
います。今回の講演を聴いた限りにおいては、食品添加物に詳しい食品添加物協
会の方々や、最近ではうかがう機会があった元三栄源FFIの中村幹雄さんに比べて
専門性の深さで大きな違いがあるのでは、と感じてしまいました。

 また、アンケート調査の結果を、食安委の事務局が説明しましたが、3分ほど
資料を見るうちに、不可思議な記載内容に気づき、質問したところ、記載内容が
不十分だったことが分かりました。

[2015-5-14]
食安委の食品リスク認識アンケート調査、癌の原因選択肢22項目の1つは
「大豆イソフラボン」、一般消費者で「組換え食品」は「自然放射線」より低位
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150513/184725/

[2015-5-14]
食安委の食品リスク認識アンケート調査、「健康影響に気をつけるべき項目」で
「組換え食品」は18選択肢の最も低位
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150513/184724/

 今週火曜日(5月12日)には食安委は、リコムがトクホ表示許可申請を行った
エノキタケ抽出物配合の体脂肪対策飲料「蹴脂茶(しゅうしちゃ)」について、
「提出された資料からは本食品の安全性が確認できない」旨の評価書をまとめ、
記者会見も開催しました。

[2015-2-3]
続報、リコムのエノキタケ体脂肪対策茶、
食安委がトクホ安全性評価のパブコメを2月4日開始
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150203/182124/

[2015-4-28]
日経バイオテク4月27日号「リポート」、2015年度開始“世界最先端”の制度
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150428/184233/

[2015-4-17]
【機能性食品 Vol.184】「機能性表示食品」公表第1弾は8件、
難消化性デキストリンのトリプル表示をキリンが実現
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150418/184004/

 今回のように健康機能が期待できるメカニズムの解明に踏み込んで「安全性が
確認できない」という説明ですと、広く食べられている食品の健康機能を追究す
ればするほど、安全性の懸念が大きくクローズアップされてくる、というお決ま
りの図式が、さらに拡大して登場した、というふうに受け取っています。

 「機能性表示食品」としての届出書が受理されたリコムのサプリメント「キト
グルカン(エノキタケ抽出物):エノキタケ由来遊離脂肪酸混合物」の機能性成
分が、今回食安委で安全性が確認されなかったトクホの関与成分と同じであるこ
とに関する報道も多いようです。このような報道では「食安委に間違いはない」
ことを前提としているわけですが、私は、安全性評価の責任を担っている食安委
にそもそも問題が多々あると、考えています。

 実際これまでに、大豆イソフラボンやジアシルグリセロール(評価の一部)で
は、国民に混乱を招く評価結果や、国際的に通用しない“ファーイースト”の変
な実験動物を用いた結果を重要視してしまうなどにより、食安委の評価結果は、
社会に大きな影響を与えてきました。

 このような評価が発表されるたびに、食安委のこの結論の裏付けはいったい何
なのか、もしもの時にどうやって責任を取るつもりなのだろうか、とその都度、
個人的には思うわけです。比較的知名度が高いと思われる文言を使うと、「この
ような結論を出すことを主導した研究者、“出てこいや”」という気持ちです。

 なお、ファーイーストの実験動物について、強く考慮すべきという発言をなさ
っていた研究者がどなたかは、たまたま私が傍聴した回については、把握できて
おります。毒性学者は「毒性を強調すればするほど研究費が増える」、という基
本的な構図があるのが、原因の1つになっているのでは、個人的には勝手に思っ
ています。

 別件ですが、毒性学者の見解からすると、「ヒジキ」は完全にアウト、とのこ
とです。仮にヒジキについて、健康機能性を検証して、トクホなどを目指して食
安委に資料がいけば、間違いなく“アウト”になるのでは、と考えております。

 このようなことでよいのでしょうか。タックスペイヤーの1人としては、もっと
食安委に頑張ってもらいたい。体制をより強化すべきでは、と思います。

 というわけで、今回は、内閣府の組織にもっと頑張って欲しい旨のエールのメ
ールとさせていただきました。

 食安委が発足したのは、03年7月なので、消費者庁と消費者委員会に比べ6年ち
ょっと先輩にあたるようです。新しい組織なので、人員や体制が不十分という側
面も大きいとは思いますが。

 そうそう情報の公開といえば、今日のシンポジウムで文科省の河合さんがお話
しでしたが、2015年度中に発表する「日本食品標準成分表2015」では、数値デー
タをエクセルで公開するとのこと。格段に利用しやすくなりますね。収載食品数
も「日本食品標準成分表2010」の1878食品に比べ、300追加するとのこと。刺身
や天ぷらといった身近かな食品や、米粉めし、ベークル、カンキツ新品種、アマ
ニ、アマニ油といった新しい食品が追加になります。

 「4冊同時発行で、歴史的大改訂」と河合さん。4冊のうちの1つは、初めて発行
する「炭水化物の成分表」です。これまでの食品標準成分表に記載されてきた炭
水化物は、引き算で算出した数値でしたが、でんぷんと単糖類、二糖類などを直
接定量分析して合算する方式を初めて採用します。有機酸や糖アルコールも測定
した食品もあるとのことです。あとの3冊は、成分表本体と、たんぱく質、脂質の
成分表です。

 メール原稿の締め切り時間になりました。最近の機能性表示食品の記事では、
明治や日本製粉の記事もご覧ください。

[2015-5-15]
明治、スズメバチVAAMの継続摂取はランナーのトレーニング効率向上、
アジア栄養学会議で発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150515/184763/

[2015-5-15]
日本製粉、新たな機能性食品表示制度でセラミド、アマニ、機能性野菜、
パミスエキスの販売に注力
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150515/184825/