こんにちは。隔週でこのメールマガジンを担当している日経バイオテク副編集長の河野修己です。

 昨日は芦屋市にあるJCRファーマ本社に取材のためお邪魔しました。仕事柄、ありとあらゆる製薬企業のオフィスを訪問してきましたが、「本社がらしくない場所にあるランキング(製薬業界編)」をやればJCRファーマがダントツでNo.1でしょう。

 JCRファーマの本社は阪神電車の打出駅(普通しか停車しない地味な駅です)のすぐそばに存在します。この辺りはいわゆる芦屋風の瀟洒な住宅街のど真ん中。当然、高さ制限があるのでしょう。本社が入っているのは落ち着いた茶系のタイルが貼られた低層ビルで、一見すると高級マンションかブティックのようです(グーグルのストリートビューで確認できます)。

 梅田や三宮に引っ越さないのには何かこだわりがあるのかもしれません。次回、取材する時には探ってみましょう。

 さて、今回、取材に伺ったのは、先月、同社が発表した血液脳関門(BBB)通過技術「J-Brain Cargo」について、西野勝哉副社長と立花克彦専務にインタビューするためでした。

JCRが開発したBBB通過技術、ペプチド付加しレセプターを通り抜け
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150422/184111/

Wmの憂鬱、脳血液関門を突破する技術がとうとう実用化
【日経バイオテクONLINE Vol.2239】
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150420/184045/

JCRファーマ、新規生物製剤2品目の開発開始を発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150415/183914/

 JCRファーマが先日、開催した説明会では、J-Brain Cargoとは「BBBに存在する特定のレセプターを通過するペプチドを発見した。このペプチドを蛋白質や低分子化合物に結合させると、蛋白質や低分子化合物もBBBを通過できるようになる」という技術だということでした。

 JCRファーマはJ-Brain Cargoを応用して酵素製剤でハンター病治療薬のJR-141を創製し、来年には臨床試験を開始したいとも発表しています。マウスやサルを使った実験では、通常の酵素製剤と比較して、JR-141の脳内の濃度が数十倍に上昇することが確認されています。ハンター病は記憶・学習障害を引き起こします。マウス実験では、JR-141が記憶・学習能力の低下を防ぐことも示されています。

 作用機序的には有効であるものの、BBBを通過できないため治療薬として実用化できない候補化合物は数多くあります。J-Brain Cargoが創薬基盤技術として本当に機能するなら、中枢神経系分野を中心にイノベーションをもたらすでしょう。実際、BBB通過技術については、世界中のアカデミアや企業の研究者が挑戦してきました。しかし、動物実験でここまでの有効性が証明された例はほとんど無いそうです。

 今回の取材で最も知りたかったのは、従業員数430人の中堅企業が、一流研究機関やメガファーマの先を行く成果をどうやって達成したかです。J-Brain Cargoの主要特許は3月に申請されたばかりで、西野副社長と立花専務の口はまだまだ堅かったのですが、ここにたどり着くまでの経緯の一部は確認できました。このインタビューに基づく記事は後日、掲載する予定です。

 ところでJCRファーマ本社の隣は個人住宅なのですが、住人の方は隣が日本企業で初めてバイオ後続品の承認取得に成功し、日本初の細胞医薬の承認申請を行い、さらには画期的創薬基板技術を実用化するかもしれない会社だと気づいているのでしょうか。