隔週でメルマガを担当しています副編集長の久保田です。ゴールデンウィーク突入で、都心の交通機関も心なしか普段より空いているように感じます。私もしばらくお休みをいただく予定ですが、米国では、新規の癌治療技術を巡って、専門家による熱い議論が繰り広げられたようです。

 2015年4月29日、米食品医薬品局(FDA)は、細胞組織遺伝子治療諮問委員会(Cellular, Tissue and Gene Therapies Advisory Committee:CTGTAC)を開催し、米Amgen社が承認申請中のTalimogene laherparepvec(T-Vec)を審査しました。T-Vecは、一部の遺伝子を組み換えた単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)に、GM-CSF遺伝子を挿入した癌治療用ウイルスであり、承認されれば、主要な先進国で初めて実用化されるウイルス療法となります。

日経バイオテク4月27日号「特集」、正念場を迎えるウイルス療法
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150427/184186/

 諮問委員会では、T-VecのフェーズIIIの結果などについて外部専門家による議論が行われ、一部報道によれば、終盤の採決で賛成多数(22対1)で「T-Vecは良好なリスク・ベネフィットを有する」と結論されたということです。一方で、腹腔内など内部の病変へのT-Vecの効果が限定的であることや、前治療やステージで分けたサブグループによって得られる効果に違いがあるといった指摘がされた模様。今後、FDAによって承認はされると見られますが、文句なしの承認というわけにはいかなそうです。

 ウイルス療法に関しては、Amgen社の動きもあり、ここ数カ月取材を続け、先日特集をまとめたばかりです。国内でのウイルス療法の開発の大部分を網羅しましたので、ぜひ、以下の記事も参考にされてください。

鳥取大中村准教授、「ウイルス療法の潮目が変わった」
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150216/182562/

タカラバイオのHF10、「投与から数カ月後に腫瘍が縮小した例も」
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150227/182859/

オンコリス浦田社長、「肛門癌は3つ目の適応になり得る」
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150311/183124/

東大甲斐教授、「開発中の組換え麻疹ウイルス、まずはイヌの臨床試験を行う」
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150406/183747/

岡山大、腫瘍溶解ウイルス製剤テロメライシンの臨床研究で中間報告
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150411/183844/

岡山大藤原教授、
「直腸癌の術前放射線化学療法にテロメライシン併用し腫瘍縮小狙いたい」
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150413/183854/

医科研藤堂氏、IL12付加型G47Δのウイルス療法も今年度臨床入りへ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150420/184046/

 国内の製薬企業の中にも、ウイルス療法に触手を伸ばしているところがあると聞いていますので、T-Vecの承認を機に、国内のウイルス療法の開発も加速するかもしれません。ただし、諮問委員会での議論でも指摘された通り、より多くの癌種の幅広い患者で効果を得るにはどうすればいいかは、広くウイルス療法に横たわる課題です。おそらく今後、ウイルス療法は、いかに全身性の抗腫瘍免疫を高めるかという課題と正面から向き合うことになるでしょう。