こんにちは。隔週でこのメールマガジンを担当している日経バイオテク副編集長の河野修己です。
*記事中、千葉大学と書いていましたが、千葉県がんセンターの誤りでした。お詫びして訂正いたします。

 群馬大学や千葉県がんセンターに続いて、神戸国際フロンティアメディカルセンター(KIFMEC)でも医療事故が起こったのではないかと大きく報道されています。肝移植分野で世界的に著名な臨床医である田中紘一氏が中心となって設立した病院で、昨年11月に診療を始めたばかりでした。

 開業以来、生体肝移植を8人に施し、そのうち4人の患者が術後1カ月以内に死亡し、日本肝移植研究会は手術の適応や実施体制に問題があったと指摘しています。私も田中氏には何度か取材したことがあります。ある日の取材は、中東の某国から招待されて手術を行って、帰国した翌日でした。中東での話を聞き、まさにスーパードクターだなと感嘆した覚えがあります。

 死亡した患者の中には、末期肝臓癌の小児患者がいたとされています。想像するに、この患者は移植をしなければ短期間に死亡してしまうという状況だったのではないでしょうか。「手術をしなければ2、3カ月で確実に死んでしまう。しかし、移植をすれば数年は生きられるかもしれない。ただし、手術のリスクはかなり高い」という状況で手術に踏み切り、賭けは失敗してしまったのではないでしょうか。

 こういう場合、後から振り返って、「手術はするべきではなかった」と、手術を選択した患者の親や医師を単純に批判できるものでしょうか。医学的なガイドラインだけでは正解にたどり着けず、当事者の人生観が影響するような気もします。当事者によって正解は異なっているのかもしれません。田中氏を批判するのであればそこまで勘案しなければ、フェアーな批判とは思えません。

 さて、日経バイオテク4月13日号から「若手研究者の肖像」という新連載を始めました。お読みいただいたでしょうか。初回は横浜市大の武部貴則准教授登場していただきました。

 この連載のために数カ月前から手分けして、優秀だと評判の若手研究者を探索していたのですが、複数のソースから武部准教授の名前が挙がったため、ご登場願ったという経緯があります。

日経バイオテク4月13日号「若手研究者の肖像」(第1回)
横浜市立大学大学院医学系研究科 武部 貴則 准教授
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150414/183891/

 この連載、隔号に掲載する予定にしていまして、次回は私が担当いたします。昨日、取材を行ってきたのですが、どんな職種でも回りから評価される人物というのはひと味違いますね。私自身、あまりの適正の無さに気づき研究職からドロップした経験を持っているので、研究に対する心構えや生活の在り方などを拝聴し、昔の我が身を振り返ると、やはりドロップしておいて良かったとしみじみ感じ入りました。