隔週でメルマガを担当しています副編集長の久保田です。医療や食品で幅広く使われつつあるゲノム編集技術、CRISPR/Cas9の特許を巡る対立が、激しさを増してきたようです。

 CRISPR/Cas9は、任意の配列を切断したり、任意の配列を置換・挿入できるゲノム編集技術。ガイドRNAとCase9蛋白質を発現させることで、従来のゲノム編集技術に比べて手軽に利用できることから、医療や食品分野などでCRISPR/Cas9を使った成果が続々発表され、世界中で利用が広がっています。

再生医療学会、ゲノム編集で患者由来細胞治療する技術開発が続々
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150322/183335/

 ゲノム編集技術としてのCRISPR/Cas9に関しては、2012年6月、米California大学Berkeley校のJennifer A.Doudna氏とスウェーデンUmea UniversityのEmmanuelle Charpentier氏らがScience誌のオンライン版で論文を発表。CRISPR/Casを使い、in vitroで狙った領域を切断できることを示しました。その後、2013年1月、米Massachusetts Institute of Technology(MIT)Broad研究所のFeng Zhang氏らが、ヒトやマウスの細胞において、CRISPR/Cas9の有用性を示す論文を発表しました。

 その後、最も重要な特許と考えられる、真核生物でのCRISPR/Cas9の有用性に関する特許は、2014年にBroad研究所が取得したのです。ただし、Feng Zhang氏は、この特許を取得するため、Doudna氏らよりも早くCRISPR/Cas9を発明していた根拠として、自身の実験ノートを提出したとされており、この辺りの曖昧さが発端ともなって、California大学とBroad研究所が特許を巡って対立する状態が続いています。

 一部報道によれば、California大学は今週、米国特許商標庁に対し、CRISPR-Cas9の発明者について再考するよう要請を出した模様。実験ノートがどこまで強力な特許の根拠となるのかどうかも含め、世界中の注目が集まっています。産業界への影響も小さくないだけに、早急な解決が望まれるところです。