隔週でメルマガを担当しています副編集長の久保田です。今、日本再生医療学会総会の会場でこのメールを書いています。再生医療に対する社会の期待を反映してか、学会は連日の盛況です。ただ、今回の学会ではいつにもまして、「再生医療のコストをどう低減するか」「どう社会で負担するか」といった議論が目立つように感じました。

 実際、昨日基調講演を行った理化学研究所多細胞システム形成研究センター網膜再生医療研究開発プロジェクトの高橋政代プロジェクトリーダーも、コスト低減の必要性や方策について、講演していました。再生医療新法と医薬品医療機器法を追い風に、再生医療の産業化で世界に先んじようとしている日本は、技術開発だけでなく、社会実装の在り方についても、世界に先駆けて解決しなければならない立場にあることを実感した次第です。

理研高橋氏、「iPS細胞ストックが出来次第、他家の臨床開発を始める」
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150319/183301/

 再生医療学会総会については、オンラインで続々とニュースを報じるほか、日経バイオテク本誌で改めて特集しますので、そちらも是非お読みください。

 さて、今週の本題です。昨秋、癌ワクチンから低分子薬の開発に舵を切ると表明したオンコセラピー・サイエンスですが、その元幹部が、続々と外資製薬企業の日本法人で、癌免疫療法の実用化の後押しを始めました。

 元外科医で、オンコセラピーのチーフ・メディカル・オフィサー(CMO)を務めていた吉田浩二氏は、2014年12月にアストラゼネカに入社し、メディカル本部オンコロジ―領域(肺癌、免疫腫瘍学)部長に就任。また、同じく元外科医で、オンコセラピーの社長を務めていた角田卓也氏は、2015年1月にメルクセローノのメディカル アフェアーズ オンコロジ― ヘッドに就きました。

 英AstraZeneca社もドイツMerck Serono社も、グローバルで抗PD-L1抗体など癌免疫療法の開発に力を注いでいます。おそらく、吉田氏や角田氏の、医師として癌治療を手掛けた経験や、癌ワクチン開発に携わった知見が求められたのだと思います。

 一方で、こうした人材を手放すことになったオンコセラピーは2015年3月10日、「T細胞受容体(TCR)解析事業」を開始すると発表しました。TCR解析は、どちらかというと低分子薬よりも癌免疫療法で注目されている技術だけに、同社の低分子薬に重点を置く戦略と、どのようにマッチするのか、注目されるところです。