こんにちは。隔週でこのメールマガジンを担当している日経バイオテク副編集長の河野修己です。

 昨日の夕方から夜のニュース、さらには今朝のワイドショーで、「線虫で癌を早期診断」という話題が大きく取り上げられていたことは、読者の皆さんもご存じだと思います。報道ステーションではトップニュースでした。

 報道ステーションのキャスターは「うれしいニュースですね」など満面の笑みで持ち上げていましたが、まだ懲りていないのかという印象です。癌診断薬や抗癌剤に関する基礎研究の論文はほんとによく目にしますが、基礎段階の有効性でそのまま実用化できるのであれば、今頃、癌は完全に撲滅されていることでしょう。

 主研究者の方も「実用化には10年かかる」とコメントしていらっしゃいましたが、ライフサイエンス分野での新規な知見が製品・サービスとして世に出るまでには非常に長い時間がかかり、陽の目を見ない研究がほとんどだということを理解した上で、冷静に伝えるべきではないでしょうか。もちろん私も新規性が高く将来有望な研究成果だと感じますが、そもそもこの段階で一般に伝えることが必要なのかという点には、はなはだ疑問を感じます。

 さて、今回、公には初めてお知らせしますが、アムジェンのCEOだったゴードン・バインダー氏の著作「Science Lessons, What the business of biotech taught me about management」の日本語版を弊社で翻訳出版します。今のところ4月中旬の発売を予定しています。

 改めて説明する必要もありませんが、1980年に設立されたアムジェンは、世界で最も成功したバイオテク企業の1つです。エポジェン、ニューポジェン、エンブレル、ベクティビックスなど生物製剤のブロックバスターを次々と生み出し、年間売上高が2兆円を超える有数の大企業に成長しています。

 タイトルからわかるようにこの本は、バリバリの文系人間だったバインダー氏が設立間もないアムジェンに入社し、回りはほとんど研究者ばかりという会社をどう成長させたかを描いています。また、かなりの部分を割いて、自らの経営哲学についても開陳しています。

 現在、全力を挙げて翻訳原稿を校正していますが、私がバイオの世界に関わる前のことがいろいろと書いてあるのでついつい読みふけってしまいます。例えば、アムジェンの初期のパートナーであるJ&Jが、製品販売差し止めを求めてアムジェンを訴えたことがあるという話は、初めて知りました。

 一方でバインダー氏は、同じく初期パートナーのキリンビールについては、理想的な提携だったと振り返っています。アムジェンとキリンの幹部たちは、仲良くなるために日本で一緒にゴルフをやったようで、バインダー氏はこの時のことを以下のように書いています。

 「キリンは契約書にサインする前に、アムジェンという会社のカルチャーを確認しようとした。総勢12人がゴルフコースに出かけ、短いパットをわざとミスしたりする接待ゴルフを見せつけ合った。キリンの人たちは誰もゴルフがうまくなかったし、彼らは驚いたようだが我々もうまくなかった。プレーの後は、日本の伝統的な共同風呂に一緒に入った」

 日本語版出版の詳細について、近日中にお知らせいたします。ご期待ください。