昨日、国立がん研究センターでSCRUM-Japanの記者会見が開催されました。理事長の堀田知光氏をはじめ、早期・探索臨床研究センター長の大津敦氏、東病院消化管内科長の吉野孝之氏、東病院呼吸器内科長の後藤功一氏、早期・探索臨床研究センタートランスレーショナルリサーチ分野長の土原一哉氏の5人のエキスパートが並び、umbrella type studyの意義を語りました。

癌ゲノムスクリーニングを進めるSCRUM-Japan開始、
狙いの1つは遺伝子検査の標準化、10社の企業が参加し臨床・ゲノム情報取得
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150310/183118/

 患者が医療機関を受診した際、同意を取得した上で新鮮試料やFFPEを採取し、マルチプレックス診断を行ってドライバー変異を評価します。基本的には変異を評価し、これをデータベースとして蓄積することが目的です。患者には、進行中の医師主導治験や企業の治験があることを紹介することもあるそうですが、複数の製薬企業がSCRUM-Japanに参加していることから、同じカテゴリーの薬剤の治験が進んでいるときにはどうなるのか、やや野次馬的な興味を感じています。

 NGSなどの技術の進歩と相まって、いよいよ癌治療が個別化に向かってさらに大きな一歩を踏み出すと感じるところですが、一方で、GI-SCREENを主導している吉野氏、LC-SCRUMを主導している後藤氏が口にするのは古くて新しい生検の問題です。

 こうしたumbrella type studyに参加したいという別の癌種のグループは多いそうですが、吉野氏によれば、大腸癌では、患者の同意をしっかりととれているか、生検試料は必要十分に採取できているか、1つ1つ丁寧に確認してきたからこそ、BRAF変異大腸癌という希少なタイプの患者をスクリーニングすることができたといいます。こうした1つ1つの対応がしっかりと得られる施設、体制がなければ遺伝子変異スクリーニングは有効に機能しないそうです。

 LC-SCRUMは2013年から開始し、2年間の経験がありますが、後藤氏によれば、生検試料の質という意味で遺伝子検査が成功した確率は95%、つまりほとんどの試料は遺伝子検査を行うための質的な基準を満たしていたそうです。FFPEだけでなく新鮮試料も求めていたにもかかわらずです。例えば、日本以外のアジアではこの成功確率は50%程度だそうです。肺癌の治療に携わる医師の意識と腕前は高いと後藤氏は言いますが、その背景にはEGFR-TKI登場以降、肺癌治療が辿ったさまざまな経緯があるのでしょうか。今後は全ての組織型の肺癌、つまりほとんどの肺癌患者が対象になっていきます。参加施設も全都道府県を網羅したそうです。一方、残念ながら十分な生検試料が得られない患者は血管新生阻害薬などの「非選択的な」治療が選択されることになるようです。高い成功率が維持されてほしいと思います。

 遺伝子検査の方法論はこの数年で急速に進歩し、網羅的な検査が数万円で簡便にできるというところまで来た現代ですが、何より生検試料の質が鍵となるというのは、NGSによる検査といった最新の方法であっても医療の一環にする難しさを感じた次第です。

 だからこそリキッドバイオプシーが注目されるのでしょう。まだまだ明らかにしなければならないこと、方法論の課題はあるようですが、とても面白い世界が広がってきているようです。リキッドバイオプシーについては、高橋記者が次号日経バイオテクで特集をまとめる予定です。是非ご覧いただき、ご意見、ご批判をいただければ幸いです。

                        日経バイオテク 加藤勇治