最後に登壇した国立衛研の川西徹所長
最後に登壇した国立衛研の川西徹所長
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    【日経バイオテク/機能性食品メール】
        【2015.2.27 Vol.177】
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 原則として毎週金曜日に「日経バイオテク/機能性食品メール」をお届けしております日経バイオテクの河田孝雄です。

 昨日木曜日(2月26日)は都内で、国立医薬品食品衛生研究所の研究者10人が発表した研究成果発表会を取材しました。この発表会の名称はかなり長くて、「平成26年度厚生労働科学研究委託費・創薬基盤推進研究事業『医薬品・医療機器の実用化促進のための官民共同研究の進捗と展望』研究成果発表会」。ヒューマンサイエンス振興財団が主催で、およそ100人近くが集まったとのことです。

 この研究成果発表会では、8番目に発表した生物薬品部部長の川崎ナナさんは、カイコや糖鎖の成果も少し紹介しました。

○日経バイオテクONLINE記事(リンク先は日経バイオテクONLINEです)
[2015-2-19]
国立衛研と生物研、組換えカイコ由来抗体はフコース少なくADCC活性が高い
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150218/182648/

 3番目に発表した医薬安全科学部第3室長の中村亮介さんの発表をうかがい、島根県で牛肉アレルギーの患者が多く、その主要なアレルゲンは、糖鎖のガラクトース-α-1,3-ガラクトース(α-gal)であることを知りました。

 島根大学医学部皮膚科学講座教授の森田栄伸さんらの研究成果です。α-galは
抗EGFR抗体セツキシマブによるアフナフィラキシーの主要原因抗原として特定さ
れ、米国では獣肉アレルギーの主要なアレルゲンとしても知られています。

 森田さんらは、牛肉アレルギー患者の多くは、カレイ魚卵を摂取したときにも
アレルギー症状を示すことを報告しています。カレイ魚卵は、子持ちカレイに含
まれる卵だろうと思います。

 ともかくも、蛋白質・ペプチドだけでなく、糖鎖も食品アレルギーの原因のエ
ピトープに成り得るというわけです。

 発表した中村さんに少しお話しをうかがい、国立医薬品食品衛生研究所(国立
衛研)のウェブサイトを調べていたら、2月26日に、食物アレルギーに関する安
全性研究のためのアレルゲンデータベース (ADFS: Allergen Database for
Food Safety)の新バージョンを公開したことを知りました。

 このデータベースが立ち上がったのは05年春以降なので、今年2015年にまる10
周年を迎えることになります。中村さんは、2013年5月に現在の医薬安全科学部
第3室長に着任するまでは、このADFSの直接の担当者だったようです。

http://www.nihs.go.jp/dnfi/
http://allergen.nihs.go.jp/ADFS/index.jsp?pagen=top

 さて、このADFSは、ひごろの取材活動でも資料でよくみかけるデータベースで
す。というのも、遺伝子組換え食品の安全性評価の資料に、「ADFS」で検索した
、という記載がよくあるからです。

 このデータベースはそもそも、組換え食品の安全性を調べる際に、対象となる
農作物に新規に導入される組換え蛋白質のアレルゲン性予測の一環として、既知
蛋白質アレルゲンとの相同性検索が求められ、これに対応するために、現在でも
(独立行政法人ではなく)厚労省管轄の国立研究機関である国立衛研が、ADFSを
構築し、毎年データの更新を地道に進めているのです。

 組換え食品の安全性評価では現在のところ、アレルゲンになる可能性のチェッ
クが、重点的に行われているようです。アレルギーの原因となるエピトープの解
析が進めば、食品の安全性評価の手法も、それに対応して進化していかねばなり
ません。

 ゲノム編集など新しい育種技術が飛躍的に発展している現在では、「組換え」
だけを特別扱いしている現在の仕組みにはひずみがたまり、破たんしてきている
ように思います。

北大の石井哲也特任准教授ら、
ゲノム編集作物の規制と表示に関する提言を論文発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150225/182806/

 米国のGRAS制度のような仕組みが、よいのでは、と考えております。米国食品
医薬品局(FDA)は、食品の安全性確保の優先順位を検討し、国がGRAS認証をす
る従来の制度から、事業者が専門家集団などに依頼してGRAS認証を自己確認する
セルフGRASへと舵を切ったのは、97年だったかと思います。今から18年前です。
セルフGRASは、FDAの「お墨付き」ではなく、事業者の自己申告・自己責任が原
則です。

 スウェーデンBioGaia社のロイテリ菌も、米国ではセルフGRASの手続きを終え
て商品化されました。

社員60人で時価95億円のBioGaia社、
乳児夜泣き・疝痛対策のロイテリ菌サプリを日本でも発売
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150223/182714/

 日本で2015年度から始まる「機能性表示食品(仮称)」制度も、事業者の自己
責任に基づく制度です。食品の安全性確認についても、事業者の自己責任とする
制度が良いのでは、と思います。

 「組換え」に相当するか「組換え」でないか、「食品」か「添加物」か、「食
薬区分」ではどのような位置付けか、などなどなど、不明瞭なことがやたら多い
ことが混乱を招いているのでは、と思います。

 食品アレルギー対策の表示では、日本が世界に誇れる制度を運用しているよう
に思います。消費者にも好評のようですし、ますますの拡充が望まれますが、科
学の進歩とともに、より細やかな対応が可能になる一方で、表示制度をどのよう
に進化させていくか、大きな課題かと思います。

[2014-11-6]
ビジョンバイオ、食物アレルギー表示推奨8品目検出の独自プライマーで特許取得
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20141106/180185/

[2010-5-20]
プリマハムが食品アレルゲンのELISAキットの販売を7月に開始、
日ハムと森永に続く
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1207/

[2009-6-23]
日経バイオテク2009年6月22日号「特集」、「表示で世界をリードする日本、
ゲノム解析の進展が寄与─食物アレルゲン対策」
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/3376/

 「食物アレルギーねっと」を運営している日本ハム中央研究所が筑波にある日本
ハムは、食物アレルギーの研究・啓発活動を、公益性の高い社会貢献活動として推
進するため、「一般財団法人ニッポンハム食の未来財団」を2015年1月27日に設立
しました。

http://www.food-allergy.jp/

 メール締め切り時間になりました。1週間前のメールで少しお伝えした京都大学
の伏木亨さんの記事も今日、ONLINE掲載しました。ご覧いただければと思います。

【機能性食品 Vol.176】機能性表示食品の説明会は3月2日から、
健康効果の検証には時間要する
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150222/182713/

京大農の伏木教授が4月に龍谷大に異動、「食の嗜好センター」率いる
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150227/182855/