ゲノム編集技術の規制をどう進めるべきか、北大の石井哲也氏が提言【GreenInnovation Vol.280】

(2015.02.26 18:00)
河田孝雄

 1カ月ぶりにGreenInnovationメールでお目にかかります、日経バイオテク編集の河田孝雄です。

 今回も、ゲノム編集の話題をお届けします。

 ここ1カ月でも、次のような関連記事を、日経バイオテクONLINEで掲載しております。ヒトをはじめとする哺乳動物では、簡便なCRISPRがよく効くので、ゲノム編集ツールの中で、CRISPRの占める比率がどんどん高まっているようです。

 ただしカイコなどのように、CRISPRよりもTALENの方が効き目がよい生物もあります。TALENのような蛋白質でゲノム塩基を認識するタイプのゲノム編集ツールは、核酸の導入は不要で、蛋白質を導入するだけでゲノム編集できる、という長所も あるため、もちろん引き続き注目株です。

[2015-2-26]
明治大と広島大など、ゲノム編集技術「PtFg TALEN」で
糸状菌の標的遺伝子改変効率100%
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150226/182827/

[2015-2-26]
北大の石井哲也特任准教授ら、ゲノム編集作物の規制と表示に関する提言を
論文発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150225/182806/

[2015-2-25]
実験動物大手のKAC、ゲノム編集とiPS細胞で新規事業
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150225/182796/

[2015-2-25]
遺伝子組換え法とゲノム編集の対比、生物研がカイコの成果を発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150225/182795/

[2015-2-24]
東大が世界最速の光スイッチ蛋白質Magnets、細胞極性も光制御
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150224/182791/

[2015-2-20]
【機能性食品 Vol.176】機能性表示食品の説明会は3月2日から、

健康効果の検証には時間要する
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150222/182713/

[2015-2-18]
日経バイオテク2月16日号「機能性食材研究」(第14回)、マダイ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150218/182626/

[2015-2-12]
国際アグリバイオ事業団(ISAAA)アグリバイオ最新情報【2015年1月31日】
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150212/182429/

[2015-2-11]
明治大が3月13日に動物ゲノム編集シンポ、米Recombinetics社や
長嶋比呂志所長ら発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150211/182382/

[2015-2-9]
阪大工の渡邉肇教授、ゲノム改変ミジンコでバイオアッセイ、CRISPRも活用
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150209/182336/

[2015-2-9]
阪大微研の藤井准教授、標的ゲノム領域を単離できる新ChIP技術で
ベンチャー設立へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150209/182330/

[2015-2-6]
米bluebird bio社、FDAがLentiGlobin BB305を
ブレークスルーセラピーに指定と発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150205/182215/

[2015-2-5]
日経バイオテク2月2日号「World Trend グローバル」、
熱を帯びる血友病の遺伝子治療開発、大手製薬会社も参入
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150205/182167/

[2015-2-5]
産総研、農研機構、遺伝子組換えニワトリの作出に成功、「金の卵」産むか
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150205/182163/

[2015-2-4]
英AstraZeneca社、CRISPR利用で企業や研究機関と共同研究契約
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150204/182159/

[2015-1-30]
日本国際賞は遺伝子治療を提唱したFriedmann教授ら、
「遺伝子治療の定義が広がり、ゲノム編集も含まれる」
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150129/181959/

[2015-1-29]
【山本研ゲノム編集アップデイト(13)】米Beckman研究所、
IDLVを用いたオフターゲット評価法でTALENとCRISPR/Cas9の安全性を検討
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150129/181920/

 さて、今日2月26日には、北海道大学安全衛生本部特任准教授の石井哲也さんら が、ゲノム編集技術に関する論文をTrends in Plant Science誌(IF13.479)で発 表なさいました。

[2015-2-26]
北大の石井哲也特任准教授ら、ゲノム編集作物の規制と表示に関する提言を
論文発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20150225/182806/

 石井さんらは今回は、ゲノム編集作物に関する論文13報を分析し、具体的な規制対応の必要性が一層裏付けられた、としています。

 ゲノム編集作物が耕作地や市場で今後急増することが想定されるため、最も厳格な規制線4から順次、規制を緩和するのが妥当としています。

 さらに、規制問題に加え、ゲノム編集作物の社会需要を進める上で想定される社会的課題も検討しました。知る権利を掲げてGM作物を含む食品の表示を求める市民運動が世界的に高まっていると指摘し、食品にゲノム編集作物の成分が含まれてい るのか知りたいと求める人々が現れた場合には、ゲノム編集作物の検査を容易にするDNAタグの導入などが考えられ、DNAタグ導入によるリスクが無いならば社会受容を高める選択肢の1つに成り得るとしています。

 今後の展望として、ゲノム編集は様々な応用が考えられるが、必ずしもその全てが社会で受容されるとは限らないとし、既にゲノム編集の応用が図られつつある家畜や昆虫などでの農業応用や、生殖補助医療との統合など、事例毎に倫理的な使わ れ方についても議論していくべき、と指摘しました。

 石井さんらは、修復的ゲノム編集と生殖補助医療との統合の問題については、2014年11月にReproductive biology and endocrinology誌(IF2.409)で論文発表なさいました(Reprod Biol Endocrinol. 2014 Nov 24;12:108.)。

 ゲノム編集作物への対応では、原料の8割を中国に依存している生薬では、特に差し迫った課題かと思います。そもそも安定調達が困難になってきています。

 安定供給の実現のためにゲノム編集育種が有用なことは多いでしょうし、痕跡が残らない育種であれば、対応するのが困難では、と考えております。

 放射線や化学変異物質でランダムに変異を入れて育種した作物は既に、日本でも広く実用化されています。ピンポイントでゲノムに変異を導入したゲノム編集作物については、むやみに不安をあおるのは、いかがかと感じております。もちろん、 必要に応じて、オフターゲット変異などの確認は必要でしょうが。

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https://bio.nikkeibp.co.jp/inquiry/

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