企業間格差が拡がるバイオ株
 2014年末(12/26現在)のバイオセクターの平均時価総額は330億円と、年初の417億円から21%減少した。IPO銘柄を除く33銘柄のうち上昇したのは10銘柄に留まる。平均時価総額を表すインデックスは2012年10月、iPS細胞研究にノーベル賞授与が決まったのを機に上昇トレンドに入った。7ヵ月後の2013年5月にピークアウトするまでの上昇率は6倍。この間、セクターを構成するほぼすべての銘柄がファンダメンタルズに関係なく上昇している。しかし、2013年半ばから、このような上昇モメンタムは消失し始め、2014年半ば以降のインデックスの動きは構成銘柄のファンダメンタルズの変化を反映している。

 2014年は、業態変化で将来の収益期待が高まった銘柄や、開発パイプラインに何らかの進展が見られた銘柄が上昇した。一方、提携解消や治験停滞と言ったニュースが出た銘柄は大きく下落した。このように企業価値の変化が株価にストレートに反映した1年であった。この傾向は、先端医療分野で画期的技術がクローズアップされるようなことがない限り、2015年も持続するとエース経済研では見ている。

 さて、製薬大手は上市品と開発品の双方を保有するが、バイオベンチャーは開発品が主体である。上市品を全く持たない企業も多い。製薬大手の場合、上市品の売上収入を四半期ごとに確認できるほか、開発パイプラインが豊富なため、四半期ごとに区切っても、何らかの進展があることが多い。つまり、企業成長の経時変化を捉えやすいのだ。

 一方、バイオベンチャーの場合、保有する創薬シーズを製薬大手にライセンスするスキームが一般的だ。そして、ライセンス先で開発が進むごとにマイルストンを受け取る。ただ、マイルストンの対象イベントが不定期であるため、四半期業績に大きな差異が生じる。また、製薬大手に比べて開発パイプラインが脆弱なため、ファンダメンタルズの変化を捉えにくい。しかも、マイルストンの額は競合上の問題もあり、公表されないことが多い。

 このため、将来業績について、バイオベンチャーは製薬大手より精緻な予想が難しくなるほか、アナリスト間の予想値にも大きなバラツキが出る。また、会社計画とアナリスト予想との乖離が大きいことも珍しくない。マイルストンの額と発生時期の前提が異なれば、赤字企業になったり、高収益企業になったりする。こう考えると、投資家は短期的な業績数字に一喜一憂するのではなく、中長期の視点から開発シーズが商業化されるプロセスを見守るべきではないだろうか。

 エース経済研究所の創薬系バイオベンチャーに対する投資評価ポイントは、開発シーズの優位性と市場ポテンシャル、開発ステージの進展と品目数、大手企業との提携交渉力、新規シーズを持続的に獲得する仕組み、IR等の経営体制の5点。食品・研究支援系バイオベンチャーでは、グローバル市場でのマーケティング力も加える。なお、これらの項目の評定が高い銘柄への投資を推奨するのではなく、今後、高くなると見込める銘柄を推奨する方針だ。

 目標株価の算定法として、PER(株価/一株利益)などの一般的な手法は使わず、将来得られるキャッシュフローを現在価値に直して総計するDCF法を用いる。前者は赤字企業には使えないが、後者は赤字額も株価に繁栄させられる利点がある。ただ、前提条件によって大きく目標株価が変わってしまう点には留意が必要だ。

 投資戦略としては、株価イベントを目標にした手法を推奨したい。上記の条件に適した銘柄を選んで下値を拾い、提携成立や開発ステージアップ、承認と言った株価イベントが出るまで保有し続ける。中長期成長を取り込むなら、複数の株価イベントの発表を待つことも有効だ。

 最後に、バイオセクターでは企業サイドと投資家サイドの間に情報ギャップが存在することに注意喚起したい。企業から発信された開示情報が投資家に正確に伝わらないのだ。もともと、開示内容自体が専門的であるうえ、色分けが難しい。たとえば、将来の企業価値に重大な影響を与える発表であるにも係らず、「今期業績に影響はありません」などと記載されると、個人投資家は内容を軽視してしまうかもしれない。
アナリストの出番はここにもある。