「本物へのこだわり」
 機関投資家のバイオ株への関心が一段と高まっています。彼らとの接触の機会が増えていることはもちろんですが、私が2012年からコーディネーターを務めさせていただいているBioJapan(パシフィコ横浜)のセミナー「バイオベンチャー成功の秘訣」でも、参加者の中に機関投資家の姿が目立つようになりました。これは、創薬ベンチャーなどがビジネスでの成果を見せ始めたからにほかなりません。

 創薬ベンチャーの開発は着実に進展しています。承認及び承認申請に至る品目数が増加傾向にあり、2015年はこれら合計が上場企業だけでも9件見込まれ、2014年を上回る見通しです。特に2015年は主力開発品が目立ちます。承認ではUMNファーマの国内での季節性組換えインフルエンザワクチンUMN-0502、そーせいグループの米国でのCOPD治療薬NVA237及びQVA149、承認申請ではアールテック・ウエノの網膜色素変性治療薬「オキュセバ」が代表です。

 開発の進展は損益にも影響します。そーせいグループは主力のCOPD治療薬が欧州と日本で承認され既に黒字を計上しており、米国でも承認されれば利益の拡大ペースが高まると期待されます。UMNファーマは、UMN-0502の承認で2015年12月期からの黒字化が見込まれます。創薬基盤技術ベンチャーへの注目度も増しています。技術に対する世界的な評価の高まりを背景に、損益の向上が期待されるからです。その代表ともいえるペプチドリームは、欧米大手製薬会社などからの契約収入で黒字を計上しており、新規契約の増加によるさらなる利益拡大が見込まれます。

 日本のバイオベンチャーの歴史が始まってから10年以上が経過し、上記のような成果が現れてきたといえるでしょう。しかし、その一方で数多くの失敗事例があることも事実です。日本のバイオベンチャーの多くは2000年頃に設立されました。日本ではバイオビジネスの歴史が浅く、参入には慎重さが必要だったのですが、米国などの先行事例の研究やビジネスモデルの検討を十分に行わなかったことなどが失敗の原因となりました。2000年頃は日本が「ゲノムブーム」に沸いており、安易な楽観論に流されたのだと思われます。そして昨今は「アベノミクス」の成長戦略の1つとしてバイオが取り上げられ、世間の注目を浴びています。こうした状況は、ともすると企業を慎重さに欠けた行動に駆り立ててしまいがちです。このような時にこそ、「ゲノムブーム」での過ちを繰り返さぬよう、冷静なビジネスマインドが求められます。

 いま、機関投資家がバイオベンチャーに期待しているのは、「夢」ではなく「現実」の損益です。日本が産業構造の転換を求められる中、新たな成長産業としての可能性を見せ始めたからです。これからも継続して成果を上げることで投資家の期待に応えることができれば、バイオベンチャーへの成長資金の供給は一段と活発化することでしょう。

 日本が最も力を入れなければならないことは、小手先のテクニックで形だけ整えたバイオベンチャーを生み出すことではなく、世界から評価される本物のバイオベンチャーを育成・強化することです。本場のウイスキーを超える国産ウイスキー造りの夢を追い続けた「マッサン」のようなプロ根性こそが、今の日本のバイオには必要です。