産学官の「連携」から「入れ替え制」や「合併、統合へ」

 2012年に私自身の専門分野であるワクチン、アジュバント開発研究分野の新春展望を述べさせていただきましたので、2015年は創薬研究において自身にとりましてもかかわりの深い産学官連携に関する展望(希望)を述べさせていただきます。

「連携」から「入れ替え制」へ
 創薬研究、支援におきまして産学官の「連携」は必要かつ成功の鍵を握っていることは間違いないと思いますが、ご存知のとおりなかなか難しいのも事実です。その理由のひとつとして挙げられるのは、欧米と異なり、産と学と官の職を行き来(出向ではなく、転職)する方々の数が圧倒的に少ないことでしょう。私が以前所属した米国FDAではスタッフの多くが産、学出身の現役研究者でしたし、実際FDAから大学、企業、他の政府機関に出向ではなく転職する例が多く、その垣根の低さに驚いたのを覚えています。そもそも米国の創薬研究では産学官(少なくとも産学)のヒトが入れ替え制なので、「連携」と銘打たなくても良いのしょう。

 日本でも、何も転職しなくともうまくいっている産学官連携ももちろんありますが、バーチャルなコンソーシアムなどでは成果(プロダクト)が出てくることはあっても、ヒト(人材)はなかなか育ちません。やはり成功例を見ていますと産と学と官の入れ替えが起こっているチームや、「一つ屋根の下」つまり、同じ機関に産学官出身者が入り混じって集まっているチームはプロダクトとヒトの両方が育っていることが多い印象です。やりたいことがはっきりしていて、かつ新しいことにチャレンジしたいと思っている若い大学、企業の研究者や医師の方はぜひ興味のある職に転職していただいてチャレンジして頂くことを期待します。

「連携」から「合併、統合」へ
 産学官のヒトが入れ替え制になれば真の連携が生まれると期待しておりますが、もうひとつ、2015年の展望としてぜひ期待したいのが、産学官の企業、大学、機関の「合併、統合」です。世界の主たる外資製薬企業や一部の日本の製薬企業は、M&Aが活発なようですし、いろいろなプロダクト、技術がシナジーを起こし新たなイノベーションが2015年に起こることを期待します。

 一方、学や官はどうでしょうか? おそらく合併、統合といった言葉とは縁のない機関がほとんどと思います。官のほうですが、2015年は少し様子が違っていて私の所属する(独)医薬基盤研究所は(独)国立健康・栄養研究所と2015年4月に統合し、(独)医薬基盤・健康・栄養研究所となる予定です。どのようなシナジーが起こるか未知数ですが、ぜひご期待ください。この統合よりももっと業界で話題になっているのが2015年4月から設立される日本医療研究開発機構(A-MED)でしょう。どちらも創薬支援に力を入れていますのでこの2機関のシナジーも期待したいところです。

 最後に大学です。私の個人的な意見としましては、ぜひ大学にも合併、統合を期待したいと思います。世界の大学のランキングで大阪大学は10位以内を目指しているそうですが、歴史的に企業が行っていることと同じこと、すなわち合併、統合をドラスティックに行ってはどうでしょうか? 無茶なたとえかもしれませんが、大阪大学と京都大学が法人として合併すれば東京大学を超えて世界の大学ランキングのTOP 10入りが可能になるかもしれません。不可能といってしまえばそれまでですが、今の日本、一見無謀とも思えるチャレンジを産学官で力を合わせてトライする機運が生まれることを2015年に期待したいと思います。