新春展望、成田年=星薬科大学教授、先端生命科学研究センター(L-StaR)センター長、順天堂大学医学部客員教授

(2015.01.01 00:00)

日本における次世代型“疾患脳研究”の展開

 「脳疾患」というと、直接的な脳機能障害(基質性障害も含む)を指すであろうが、私自身、「疾患脳」という言葉を、様々な疾患が脳によってコントロールあるいは影響を受ける可能性を想定した造語として使っている。

 例えば、「脳腸相関」といわれるように、末梢臓器疾患と脳機能障害は一部連動すると言った解釈もこれに含まれる。生活習慣病やがんなどの発症や増悪化も、脳による修飾がその一因とも考えられるようになって来ている。また、ストレス、ショックなどによる脳機能への過剰負担は、おそらく免疫動態の変化等に寄与することで生体全体に対してダメージを誘引し、病態悪化へのイニシエーションとなる。

 一方、強い意志/闘志/意欲などは、生体生理機能を全般に押し上げる可能性も科学的に証明されつつある。まさに、そのステーションとなる「脳」の疾患修飾への寄与を解明する次世代型研究が我が国において芽生えて来ている。その特徴的な研究ベクトルとして、霊長類を用いた「脳プロジェクト」が世界的な注目を集めている。

 また、革命的技術革新により支えられている「神経回路網解析」やグリッド細胞研究に見られるような、「脳シングルセル解析」の応用に着手している先進的神経科学研究は、飛躍的進歩を遂げている。前者の霊長類を用いた国家的な脳プロジェクトは、“Brain/MINDS” (Brain Mapping by Integrated Neurotechnologies for Disease Studies ; 革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト) と呼称されている。このプロジェクトでは、慶応大学医学部の岡野栄之共同プロジェクトリーダーが率いるグループにより、精神疾患や神経変性疾患のトランスジェニック霊長類モデルを作製/使用したミクロスケールからマクロスケールに至るまでの疾患脳機能解析が遂行される。

 また、理化学研究所脳科学総合研究センターの宮脇敦史プロジェクトリーダーが率いるグループにより、疾患脳機能の可視化/マッピングを行い、さらには東京大学の笠井清登プロジェクトリーダーが率いるグループによる患者由来の脳スキャン画像情報を統合させることにより、精神疾患や神経変性疾患の分子発症機序解析やその治療法の新しいストラテジー作りが行われる。

 一方、星薬科大学、先端生命科学研究センター(L-StaR)、慶應義塾大学医学部、国立がん研究センター、理化学研究所脳科学総合研究センター、名古屋大学医学部、順天堂大学医学部、富山大学医学部、奈良先端科学技術大学院大学、和歌山県立医科大学、福島県立医科大学等を中心にした多施設共同ネットワークにより、ヒト疾患iPS細胞研究をはじめ、げっ歯類による脳細胞ゲノム編集や光遺伝学的/化学遺伝学的手法の応用による「疾患脳シングルセル解析」を行っていくプロジェクトが着々と進んでいる。

 これらのアプローチにより、霊長類-ヒト脳研究の後押しが可能となる。こうした次世代型の疾患脳研究により、今まで解読不可能であった脳連関型難治性疾患の解明が飛躍的に進む可能性が期待される。

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