バイオ知財の活用向上とバイオ産業の発展に向けて

新年あけましておめでとうございます。
本年が読者の皆様にとって実り多き年となりますよう心より祈念申し上げます。

 さて、昨年はバイオ特許の分野では米国におけるMyriad最高裁判決、及びPrometheus最高裁判決により実務家にとっては非常に苦しまされる年となりました。ガイドラインの修正は続いているものの、今年も引き続きバイオ特許の米国における権利化には時間と工夫が求められることとなりそうです。

 一方で、日本においては、健康・医療戦略推進法及び独立行政法人日本医療研究開発機構法が成立し、今年は医療分野にとって新たな一歩を踏み出す年となります。バイオ系VCや特許事務所で、ベンチャーと大学の支援を続けて13年となりますが、このような政府による積極的な取り組みや、時間をかけて成長した企業が次々と上場を果たしている状況を見ていると、ITと比較してサイクルの長いバイオ産業が、やっと1つの転換点を迎えたように感じます。

 この間、弁理士として、国内外の特許出願を扱っていて感じることは、外国は総じて積極的であり、日本は総じて保守的であるということです。外国から入ってくる出願は、斬新な技術で勝負している傾向がありますが、日本からの出願は確立された技術を利用していることが多いように思います。これは日本に斬新な技術がないことを意味するのではなく、日本では確立された技術でないと評価を受けられないことを意味しています。バイオの分野では新規技術は失敗のリスクが高い傾向にありますが、海外では新規事業化を達成することが困難であるのに対し、日本では新規事業化への挑戦が困難であるとの違いがあるように見受けられます。転換の年を迎え、価値ある新しいことへの挑戦の扉が開く年となってほしいと思います。

 また、反省も含めこれまで最も力不足を感じてきたことは、発明者・担当者の方々の御協力の下で権利化した特許も、事業化されなければ価値を生まないことです。いわゆる休眠特許です。バイオの分野で知財が重要だと言われますが、ある一面からの支援には限界があることを実感してきました。例えば、医薬品シーズの場合、知財は必須ですがそれのみで価値を生み出すものではなく、そもそもの市場価値から臨床試験計画、必要資金を含めた想定事業化プランとセットで初めてその重要性が描き出されます。そして、その計画が進行して初めてその価値を高めることができます。プラットフォーム技術なら、サービスや商品の全体像があって、その中での知財化技術の必要度、他の必須技術の構築の可能性が検討されて、その知財の価値、必要な権利範囲が見えてきます。

 休眠特許については、その活用に欠けているのは、事業化の意思を持つ者の存在だと思います。何らかの事業が進行するとき、必ずそこにその事業を実現化しようとする意志を持つキーパーソンがいます。公的機関によるパッケージング化などのシステムではなく、電機業界が行っている開放特許活用の機会創出策を広く権利者(個人、大学、企業を問わず)が利用可能とすることにより、事業化の意思を持つ者と特許を結びつける仕組みがあればと思います。

 また、本来の専門家の役割は、専門的知識と経験を上手に利用していただき、それを判断材料としていただくことだと考えています。それでも知財の専門家の領域を超えて知財支援が必要な場合には、それぞれの分野で長けた知識と経験を持つ専門人材が必要になります。今年はより充実した知財支援を実現するため、これまでの様々な方とのご縁から、支援人材(資金・事業化・開発・知財など)が有機的に連携することにより、事業化・ライセンスを推進するための総合的な支援へと発展させることができればと考えています。

 最後に、今年、バイオ産業の新たな時代に活躍するのが、より多くの「人」であってほしいと思います。話題の会社名、組織名や制度名と肩を並べて、山中伸弥先生の他にも多様な魅力的な人(ITですがマーク・ザッカーバーグ、ピーター・ティールのような)がニュースに登場することで、バイオ産業の魅力が広く国民に浸透することを期待したいと思います。