熱帯性の感染症治療・予防薬開発にも向き合いたい

 近年、目覚ましいスピードで創薬の技術開発が進んでいる。抗体医薬、低分子医薬いずれにおいても、これまでにない効果や安全性を実現できるようになってきた。その結果、難治性の癌に対しても安全性が高くかつ極めて長期間の生存を可能にする薬剤が開発されている。

 また、再生医療の分野においては、iPS細胞を用いた網膜再生が臨床治験の段階に入り、新たな可能性が示されつつある。一方で、近年のゲノム解析技術の進歩から、大規模コホート研究にゲノム解析を組み込むことが可能となり、疾患に伴う遺伝子の変異や変化が新たに数多く見出されつつある。この大規模データから、いかに創薬ターゲットを見出し、薬剤の開発につなげていくことができるかが、今後の新薬創出の一つの鍵になるであろう。

 昨年は西アフリカに始まったエボラウイルスの感染拡大、東京都内でのデングウイルスの感染といった、私たちが身近に起こることを想定していなかった熱帯性の感染症が問題となり、これらの感染症に対する認識不足や準備不足を思い知らされた年でもあった。

 交通網が発達し、人々がグローバルに移動する現代社会において、先端的な医療を施すことが難しい発展途上国や開発途上地域で発生した感染症は、適切な処置が施されなければ、短期間に先進国にも広まることを改めて認識させられた。

 今後は、熱帯性の感染症の治療や予防に用いることができる薬剤を開発し提供していく重要性に対しても、しっかりと向き合っていきたい。