新春展望、角田健治=iHeart Japan社長

(2015.01.02 00:00)

2015年は時代の変化を「実感」できる年に

 日本では、いわゆる改正薬事法が2014年11月25日に施行され、2015年には、新しく設けられたカテゴリーである再生医療等製品として、早速、JCRファーマの間葉系幹細胞、テルモの骨格筋芽細胞シートなどに対して製造販売承認が下りる可能性がある。一般には、その意味で、2015年は時代の変化を実感できる年になるだろう。一方、再生医療等製品を開発している業界人にとっては、新法下での薬事戦略相談でどのような議論がなされるかも興味深い。実際、私が経営を任されているiHeart Japanは新法施行直後の12月に薬事戦略相談の対面助言を行ったが、おそらく、業界人の多くが、新法施行後すぐに薬事戦略相談を行おうとするだろう。この国がどれほど変わったか。業界人にとっては、こちらの意味で、2015年は時代の変化を実感できる年になるはずだ。

 再生医療等製品というカテゴリーにはいわゆる遺伝子治療薬も含まれるが、ここでは細胞医薬品について述べたい。

 以前、cell therapy(細胞治療)という言葉がよく使われていた頃、それは患者自身の細胞を体外で培養したり加工したりして患者に戻すという治療方法(自家移植)を指していて、製造コストの高さが非常に心配されていた。しかし、投与する細胞や投与する部位をうまく選択することで、免疫拒絶を回避する目処が立ち、ドナー由来の細胞を不特定多数の患者に使う治療方法(同種他家移植)が登場して、製造コストは劇的に改善した。これはtailor-madeのサービス業からready-madeの製造業への移行を意味し、製品はcell drug(細胞医薬品)と呼ばれるようになった。そして、細胞医薬品は、もはや、一時的なブームではなく、不可逆的なトレンドになった。数十年前、低分子医薬品から抗体医薬に代表される蛋白質医薬品に進化したように、医薬品は、今まさに、蛋白質医薬品から細胞医薬品に進化しつつあると言える。

 かつて、米Genentech社がヒトのインシュリンを大腸菌に作らせた蛋白質医薬品を開発していた頃、低分子化合物と違って、立体的にも複雑な構造を持つ蛋白質は品質規格を定められない(または定めるのが非常に困難)と思われていた。低分子化合物が(光学異性体などの例外があるとはいえ)おおむね平面の構造式で表せる程度の構造であるのに対し、アミノ酸配列が同じでも立体配置によって活性の有無が異なる(さらには糖鎖修飾なども影響する)蛋白質は、到底、平面では表せない。すなわち、低分子医薬品から蛋白質医薬品への進化は、いわば、2次元から3次元の進化であったと言え、次元が異なるからこそ従来の品質規格の考え方では対応できなかったといえる。Genentech社が取り組んでいた頃、大手製薬企業の多くが、「本当に販売が承認されるのか」と訝って、様子見していた。勇敢に冒険したのは米Eli Lilly社であり、そのリスク・テイクはインシュリンによる莫大な売上によって報われた。一方で、先頭集団の数社を除き、様子見していてリスクを取らなかった企業は、蛋白質医薬品というblue oceanで大きく出遅れることになった。

 細胞医薬品を4次元と言うべきか5次元と言うべきかについては議論の余地があるだろうが、いずれにせよ、蛋白質医薬品から細胞医薬品への進化は明らかに次元を超える進化であり、細胞医薬品が先進国で販売され始めた今は、蛋白質医薬品が販売され始めた頃と似ている。3次元の品質規格の考え方で、4次元や5次元には対応できない。しかし、4次元や5次元の品質規格の考え方は作れるし、細胞医薬品が販売され始めたということは、細胞医薬品の品質規格の考え方が作られたことに他ならない。今、蛋白質医薬品の製造や品質規格に困難を感じる人はいない。すでに細胞医薬品が販売され始めていることを考えれば、近い将来、細胞医薬品についても同様になることは容易に予測できる。

 ドラッカーは「future that has already happened(既に起こった未来)」という言葉を使ったが、細胞医薬品の普及は、まさに、「既に起こった未来」である。2015年はそれを実感する年になるだろう。

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