低分子化抗体によるがん画像診断の幕開けの年

 新年明けましておめでとうございます。弊社は日本法人を昨年設立して産声を上げたばかりのベンチャー企業ではありますが、本年にかける期待は大きいものがございます。本社は米国UCLAをスピンアウトして2007年に設立されたバイオテック企業で、放射性同位元素標識あるいは蛍光標識した低分子化抗体を用いて、がんや免疫・炎症疾患の画像診断薬、外科手術時の蛍光ガイド薬、抗がん剤などへの製品開発を行っております。

 フルインタクト抗体は高い分子標的親和性を有し、体内半減期が長いことから治療薬としての有用性が高く評価されており、近年の製薬業界におけるバイオブームを牽引しておりますが、この高い標的親和性を画像診断薬として応用するためには臨床実用上、体内クリアランスを早め、薬剤投与後短時間のうちに病巣と正常組織のコントラストをつけられることが重要と考えられます。弊社ではこの抗体の高い親和性を損なうことなく低分子化する技術を有しており、低分子化したプローブを用いて放射性核種標識を行い、PET(陽電子放出核種断層撮像法)画像診断用の薬剤を開発中です。

 今年の第一の抱負としましては、米国本社のパイプラインの中で先行開発中のPSMA(Prostate Specific Membrane Antigen)抗体を低分子化したPET診断薬89Zr-Df-IAB2Mの国内臨床研究を実施することにあります。PET診断では物理学的半減期の短い放射性薬剤を使用しますが、本剤では半減期が約3日と物流的には比較的扱いやすい核種である89-ジルコニウムを用いており、院内製造施設が不要である利点を持っております。薬剤標的であるPSMAは前立腺癌において、腫瘍の進展と相関することが示されており、特にホルモン療法抵抗性および転移性癌で高いレベルで発現していることが知られています。

 本薬剤は原発巣のみならず骨転移、リンパ節転移などの造影も可能であり、現在米国でP2段階にあります。本剤が実用化されれば、高質な前立腺がんの診断が可能となるだけでなく、抗がん剤とのコンビネーションによる個別化医療の実現が期待されます。そのため治療薬を有する製薬企業や放射性核種製造企業との協働に取り組みたい所存です。

 第二の抱負としましては、ハイリスク、ハイインパクト研究へのチャレンジを国家戦略特区や日本医療研究開発機構(Japan Agency for Medical Research and Developement:AMED)などを活用した産学連携で行うことにあります。弊社が取り組んでおります、放射性薬剤ひとつを取っても規制緩和や様々なインテグレーションによって国内の医療環境は大きな飛躍が期待できると思います。安全性をしっかり担保しつつも、新たなる低分子化抗体の可能性に挑戦する年にしたいと考えております。