こんにちは。隔週でこのメールマガジンを担当している日経バイオテク副編集長の河野修己です。

 本日は今年、最後の仕事日。本来であればのんびり経費精算でもするつもりだったのですが、昨日、夕方に届いたメールのおかげでそういうわけにはいかなくなりました。理化学研究所が本日、STAP細胞に関する研究において不正があったかどうかを調査した結果を発表すると通知してきたからです。

 会見は10時から始まり、13時に終了。先ほどオフィスに戻ってきたところです。調査結果は宮田がtwitterで伝えていますが、概要をまとめると以下の通りです。

・残されているSTAP幹細胞をシーケンサーで解析した結果、全て理研内にあったES細胞由来の細胞と断定した。
・新たに2つの図表でねつ造を認定した。そのうちの1つについて小保方氏はデータ操作を認める発言をした。
・誰が不正を主導したかは分からなかった。理研はこれ以上の調査をやるつもりはない。
詳しくはこれから掲載する日経バイオテクONLINEの記事をご覧ください。

 さて、本日は研究不正に関する会見がもう1つありました。東京大学分子細胞生物学研究所の教授だった加藤茂明氏の研究室で行われたとされる論文の捏造・改竄に関する会見です。こちらの会見については、既に記事を掲載しています。

多比良氏よりも時系列は古い加藤茂明研の論文問題、
「任期中に最終の調査報告できた」と東大の濱田学長
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20141226/181404/

 さて、理研の会見には100人以上の記者やカメラマンが集まっていましたが、東大は25人程度だったようです。しかし、研究コミュニティーの視点から2つの事例を比較してみると、東大の方が不正の程度ははるかに深刻だということが分かります。

 今回、不正があると認定された論文は全部で51報。一番古い論文は1999年のものです。不正行為を行ったと断定されたのは加藤氏を含めて4人で、加藤氏以外の3人はその後、教授、准教授になっています。複数のベテラン研究者が、不正を主導していたわけです。さらに7人が図の捏造・改竄に関与したとされています。研究室ぐるみでせっせと不正論文を作成していたことになります。

 理研の会見では、「世界3大不正ではないのか」「世間をこれだけ騒がせたがこれで終わりなのか」「理事長と理事は総退陣するべきではないのか」と厳しい質問が相次ぎましたが、どうも私にはフェアーだとは思えません。理研の理事長に退陣を迫るなら、東大総長にも同じ要求をしなければなりません。

 理研の問題がここまで世間の耳目を集めたのは、一般マスコミ(文系マスコミと言ってもいいかもしれません)が食いついたからです。それには2つの要因があります。1つは研究内容が分かりやすかったこと。もう1つは若い女性が主人公だったことです。極めてアーリーな段階の基礎研究の論文に必要以上に大はしゃぎし、そのあげくの理研バッシングにはかなり辟易しています。ちなみに、本誌のSTAPに関する第1報はこんな感じでした。

理研CDBと米Harvard大が胎盤にも分化するSTAP細胞の成果をNature誌で発表、
酸性溶液で体細胞を初期化
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20140129/173599/

 批判するなと言っているわけではありません。論文に対する疑義が出てからの理研の対応には、稚拙な部分が相当ありました。当初は理研自身が報道を煽った面もあります。しかし、不正の程度を冷静に見極めるのではなく、マスコミや世間が騒いだかどうかで処罰の軽重が左右されるとすればおかしな話です。

 バルサルタン問題など今年は研究不正が特に目立つ年になってしまいました。来年は日本のアカデミアが信頼を取り戻せる年になってほしいものです。