こんにちは。隔週でメルマガを担当しています副編集長の久保田です。

 今日は昼過ぎまで、STAP現象の検証実験の記者会見でした。朝の7時半から会場に並んだ結果、会場の最前列に陣取ることができました。一時は会場で席を確保するのも難しかったことを考えると、STAP熱は若干収まったようにも感じます。もっとも、今日の会見に小保方晴子研究員が出席しなかったせいかもしれませんが。

 会見の内容は、日経バイオテクをお読みいただければと思いますが、会見の冒頭に検証実験の責任者である相澤慎一チームリーダーが「STAP現象を再現することはできませんでした」と説明したことがすべてでしょう。

 小保方研究員による検証実験でも、丹羽仁史副チームリーダーによる検証実験でも、STAP現象の再現には至りませんでした。具体的には酸処理により、GDP陽性細胞塊を高頻度に出現させることも、その細胞隗を用いてキメラ性を持つ胚を作製することも、まれに出現したSTAP様細胞(Oct3/4陽性細胞)からLIF/ACTH含有培地を使ってSTAP幹細胞を作製することもできませんでした。

 検証実験も、科学的な視点からはいろいろ突っ込みどころもあるものの、とりあえず理研はこれらの結果を持って、当初2015年3月まで予定していた検証実験を終了することを決定。また小保方研究員は既に理研に退職を申し入れ、12月21日付で退職することが決まったそうです。

 さて、我々にとって今年は、STAP問題に始まりSTAP問題に終わった1年でした。そして今日の会見の最後、会場を後にしたはずの相澤チームリーダーが、再び会場に現れ、立ったままマイクを握って憤慨した表情で次のように発言しました。

 「モニターや立会人を置いて検証実験をするのは科学のやり方ではない。科学のことは科学のやり方で処理しなければならないはずであり、こうした検証実験をしてしまったことに重い責任を感じている。今後、何か(論文捏造のようなことが)ある度に、研究者を犯罪人のように扱って、科学の行為を検証しなければならないというのは、科学にあってはならないこと。そのことに関しては、検証実験の責任者としてお詫びを申し上げるとともに、責任を痛感している」

 相澤チームリーダーが、一体誰に対してこの思いを訴えたかったかは定かではありません。ただ個人的には、この発言の根底に「研究不正や論文捏造が許されるものではないにせよ、なぜSTAP問題だけがこんな風になってしまったのだろうか」という、釈然としなさ感や無力感が、べとっとこびりついているような印象を受けました。

 STAP問題には、様々な偶然や思惑が絡み過ぎました。特定国立研究開発法人の指定前という絶妙な時期に再生医療という注目度の高い領域で若い女性研究者の研究が一流誌に掲載されたこと、それを当時の発生・再生科学総合研究センター(CDB)が演出を凝らして大々的に発表したこと、その発表を受けてメディアが論文よりむしろ女性研究者を過大に報じ出したこと、その反動でネットなどにより不正や捏造疑惑が次々と判明したこと、それに対し理研が特定国立研究開発法人に指定されるべく調査委員会の結論を急いだこと等々。この辺りから、STAP問題はとっくに科学の問題ではなくなって…。

 モニターや立会人を置いての検証実験は、まさにこうした偶然や思惑が絡み合って、科学の問題ではなくなった結果だと、私は考えています。丸一年を費やしたSTAP問題で、果たして登場人物(研究者や科学コミュニティ、理研、文部科学省、一般メディアや専門メディア)は何を果たし、何を得たのか。年末年始のお休みに、ゆっくり考えたいと思います。

 今年一年、日経バイオテクをお読みいただき、ありがとうございました。よいお年をお迎えください。そしてまた来年も、どうぞよろしくお願いいたします。