先日、京都市で開催された「新世代のがん分子標的療法開発戦略シンポジウム」に参加しました。

京都府立医大酒井氏、RAF/MEK阻害薬CH5126766が付加価値を持っていた訳を紹介
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20141207/180984/

日本でもumbrella type study始動、癌のゲノム・分子異常解析に応じた
SCRUM-JAPAN設立、胆道癌などへも展開
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20141209/181028/

AMED初代理事長に就任予定の慶應大末松氏、選挙などがあるが、
4月1日からの研究費の円滑な運営開始に尽力する
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20141209/181029/

 癌の分子標的薬として実用化した薬剤の標的を同定したり、スクリーニング系を構築したりした実績を持つ4人の演者の講演は、これまで見聞きしたことを踏まえても非常に興味深いものでした。

 一番気になったのが、講演要旨集に書いてあった、4人の演者が関わった薬剤の開発状況一覧です。免疫チェックポイント阻害薬の標的であるPD-1を発見した京都大学の本庶氏の開発着手年は1992年、愛知医科大学の上田氏が開発に関わった抗CCR4抗体ポテリジオの抗体作製は1999年、京都府立医科大学の酒井氏が構築したRB再活性化スクリーニング系を用いて選抜が着手されたのが2001年、東京大学(当時自治医科大学)の間野氏が発見したALKの阻害薬開発着手年が2007年でした。

 1992年の免疫チェックポイント因子であるPD-1の発見後、2003年にPD-1シグナル阻害による癌と感染症の治療の特許が成立、2006年にヒト型抗PD-1モノクローナル抗体を作製、2014年にメラノーマで承認を取得したので、足かけ22年になります。モガムリズマブは1999年に協和発酵キリンが抗体を作製し、2003年にはポテリジェント技術を応用、2007年にpivotal試験が行われ、2012年に承認ですから、足かけ13年です。

 一方、RB再活性化スクリーニング系を用いてスクリーニングが始まったのが2001年でtrametinibの特許が出願されたのが2005年、2006年にGSK社に導出され、フェーズI試験が2009年、フェーズIII試験が2011年で、2013年にFDAが承認したので、足かけ12年になりますが、酒井氏は臨床試験開始から承認までわずか4年間と主張されました。

 間野氏がALKを発見してから、フェーズI試験が開始され、承認を得るまでに4年間、承認後に既存治療との比較を行うためのフェーズIII試験が実施され、今に至ります。

 海外企業の開発は早くて、国内企業は、と思いましたが、ニボルマブも海外でフェーズI試験が開始されたのが2006年、国内では2009年で、2014年国内承認ですから5年間ぐらい。モガムリズマブも臨床試験開始から承認までは4年間です。国内でもタイムスケジュールは同じくらいです。

 結局、フェーズI試験から承認まではおよそ4、5年間ですから、昔から言われているように今も創薬には10から20年かかるとすると半分から8割の時間はシーズ探しが占めることになります。

 一方、最近の国家プロジェクトはだいたい5年間のプロジェクトで行われることが多く、さらに多くの研究者からは最初の1年はプロジェクト立ち上げに、最後の1年はポスドクの職探し、などと聞くと、5年間といえども、実質的な研究期間はおよそ3年半程度と言えそうです。

 さて、この時間のギャップはどう埋まっていくのか。AMEDの今後の差配に注目したいのですが、最後に、最近聞いた若者の就職理由です。この若者は大学院修士に行きましたが、博士課程には進みませんでした。何故かと聞くと、「創薬は10年、20年必要と聞いて、『そんなに長い間、付き合ってられるか』と思った」そうです。個々の性格に依存する部分はあるとしても、身の回りのものが半年、1年で古くなってしまう今を生きるこれからの研究者が、どう創薬と向き合っていくか、真剣に考えなければいけないかもしれません。

                         日経バイオテク 加藤勇治