こんにちは。隔週でこのメールマガジンを担当している日経バイオテク副編集長の河野修己です。

 先日、本誌記者の伊藤勝彦と一緒に京都まで、ファーマフーズの取材に行ってきました。現在、ファーマフーズの売り上げのほとんどは健康食品関連の事業から発生しています。しかし、今同社は、創薬事業を次の柱に育成しようと、投資を拡大し始めています。これは取材しなければということで、金武祚社長に話を伺ったわけです。

 このインタビューに基づいているのが、伊藤が執筆した以下の記事です。
「創薬事業に投資で株価は10倍」、ファーマフーズの金武祚社長に聞く
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20141118/180547/

 この記事に以下のような部分があります。

問「医薬品開発には多額の研究開発費が必要であるが、その点をどのように考えているのか」
答「チャンスと思えば、研究開発費に投資をする。タイミングを逃してはいけない。瞬時には赤字になるときもあるかもしれないが、赤字が長く続くことは無い。リスクを最小化することが、自分の仕事であると考えている」

 この部分、伊藤が金社長のことを慮ったのか、実際のやり取りからは若干マイルドに修正されています。質問したのは私で、こう聞きました。「本格的に医薬品の研究開発に参入すると、短くても数年、長ければ10年以上、毎年10億円単位の費用が必要になる。金社長はそういう状況を受け入れる覚悟を持っているのか」

 私が記憶している限りでは、金社長は私の質問に対して、「しばらくはかなりの赤字になるかもしれないが、成功する可能性があるならそれは受け入れる」と回答しました。これはファーマフーズの将来にとって重要な発言です。「社長が言ったからにはそのまま書きますよ」と確認しましたが、「それでかまわない」とのことでした。

 ファーマフーズの当期純損益は、2012年7月期6000万円、2013年7月期2億6900万円、2014年7月期800万円と推移しています。つまりこの会社は常に黒字を維持しており、投資家などのステークホルダーもそういう会社として同社に関わっているということです。しかし、創薬事業への本格参入は、会社のビジネスモデルや性格が全く変わってしまうことを意味します。

 実はファーマフーズの株価は、創薬事業への参入を発表して以降、大幅に上昇しています。バイオベンチャーの株主は大部分が個人投資家です。医薬品と聞けば食品に比べて何となくビッグビジネスになるようなイメージを持っているのかもしれませんが、その分、リスクははるかに大きいことを十分に理解しているかには疑問が残ります。今後、研究開発費が増加し、億円、あるいは10億円単位の赤字を計上するような事態になった場合、それでも個人投資家は将来に期待して株を持ち続けてくれるでしょうか。

 もちろん金社長はそうした事情を検討した上で、創薬事業への本格参入を決断していると思います。できるだけリスクを低減する策も打ってくるでしょう。それでも予想外の事態が発生するのが創薬事業の怖いところです。これまで多くの創薬ベンチャーが計画通りに研究開発を進捗させられず消えていったのは、読者の皆さんもよくご存じのはずです。

 金社長が私の質問に回答している間、私が注目していたのは、社長の横に座っていたある部長の表情でした。彼の顔には、「社長、そこまではっきり言わなくても」という色が浮かんでいたからです。推測するに、創薬事業にどこまで投資できるかファーマフーズ社内にもまだ様々な意見があるのかもしれません。

 とはいえ今回のインタビューでは、自社から医薬品を生み出したいと金社長が本気で考えていることは強く伝わってきました。より困難な道を選んだファーマファーズから今後どのような製品が出てくるのかが楽しみです。