医薬品医療機器総合機構(PMDA)の科学委員会が、プラセボ対照試験の扱いに関する検討を開始しました。「プラセボ対照試験に関する専門部会」で、開発段階、審査・相談段階におけるプラセボ対照試験の要否の判断について現場の実態を踏まえて考え方を整理し、PMDAはその結果を活用するとしています。

 一般に新薬の有効性検証はプラセボとの比較が原則と考えられていますが、致死性の疾患で標準的治療法が確立している場合には、プラセボ群を対照として比較試験を実施することは倫理的に問題があることが指摘されてきました。この点に関して、「常に非倫理的で許容できない」とする立場と、「深刻なリスクがなく、対象者の同意があれば許される」という立場との間で、1990年代から論争が続いてきました。

 これに付随して、「途上国の臨床試験においても、全ての被検者に“最善の医療”が提供されるべきか? 途上国が必要とするのは、その国で“利用可能な最善の医療”ではないのか」という標準治療とは何かに関する論争や、「リスクが低い場合には、確立した治療があってもプラセボが許容されるのではないか」という議論がありました。

 現在では、標準治療が存在する場合には、科学的な必要性があり、被検者に重篤または回復不能な害を与えないことがプラセボ使用の条件として国際的にコンセンサスが得られているようですが、標準治療や回復不能の定義については曖昧なままです。

 一方、致死性の疾患になりうる癌においては、分子標的薬の登場以降、プラセボ対照の試験が見直されているようです。その理由として、まず、多くの分子標的薬は経口で服用しプラセボが投与しやすいことと、疲労などといった副作用が薬剤によるものか癌によるものかが区別しにくいことがあります。そして、効果を腫瘍の縮小ではなく無増悪期間や延命期間で評価する場合には、プラセボが必要になるというのです。その場合は、標準治療にアドオンする形で試験薬とプラセボが投与されます。

 薬剤の進歩とともに治験の在り方も見直されます。実薬対象試験では、評価者バイアスの影響を受けやすいことや、群間差を小さくする可能性が指摘されています。また、グローバルな視点から、薬剤の承認には非劣性試験ではなくプラセボ対照試験が求められるという背景もあります。

 現在、2001年に通知された「臨床試験における対照群の選択とそれに関する諸問題」がガイドラインとして存在していますが、10年以上時をおいて示される指針がまとまるのは、来年になりそうです。

                       日経バイオテク編集長 関本克宏

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