皆さん、お元気ですか。

 なでしこジャパンを破った北朝鮮は核爆弾だけでなく、国家を挙げて女子サッカーのチームを育成しています。今回のなでしこジャパンは海外組や澤選手のいない若手中心のチームでしたが、しかし、ファンとしてはなんとも不甲斐の無い試合をしたとがっかりしています。不正確なパス、守備陣も崩壊しているなど、来年のワールドカップまでには相当なテコ入れをしなくては、またかつての日本女子サッカーチームに後戻りしてしまうことは避けられません。相当がっかりしております。

 さて本日、Twitterを開始したと告知するつもりでしたが、使い方に習熟しておらず、残念ながら来週の月曜日までお預けです。週末に一生懸命勉強しなくてはなりません。今月中にガラケーをスマホに泣く泣く変えることもあり、来月から本格活用が始まります。ライブでビビッドな情報をお届けしたいと思います。

 さて、「Wmの憂鬱、日本のイノベーター」連載第3弾の3回目を掲載いたしました。4回目は明日、仙台までの新幹線の車中で完成させ、即時公開いたします。フランスでとうとう、第1例に投薬され、経過は順調だという報道もあります。富山化学の抗RNAウイルス阻害剤「アビガン」に注目です。下記からどうぞアクセス願います。

Wmの憂鬱、日本のイノベーター、
第3回の(1)、エボラ出血熱アウトブレイクで一躍脚光を浴びた「アビガン」を生んだ2人の突破者
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20140917/179023/?ST=wm
第3回の(2)、「アビガン」は富山化学初のランダムスクリーニングの産物だった
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20140919/179088/?ST=wm
第3回の(3)、競争企業は進み過ぎた、伝統的な細胞ベースの選抜が「アビガン」の幸運を引き寄せた
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20140929/179249/?ST=wm

<<日本のイノベーター過去記事>>
〇高尿酸血症治療剤『フェブリク』
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20140901/178694/?ST=wm
〇ALK陽性非小細胞肺がん治療薬「アレセンサ」
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20140818/178464/?ST=wm

 さて、協和発酵キリンが相次いで成人性T細胞白血病の治療薬「ポテリジオ」を、英国AstraZeneca社と米Pfizer社と、2014年7月30日と9月30日に相次いで共同開発契約を結び、癌免疫療法の臨床開発を展開する決断を下しました。我が国では成人性T細胞の治療薬として認可されている「ポテリジオ」が実は制御性T細胞を除去する癌免疫療法の一種であることが証明された結果です。このメールでも何度もお伝えしておりますが、成人性T細胞白血病は制御性T細胞が癌化したものであり、これに細胞障害作用を示すポテリジオは当然、抗CTLA-4抗体「Yervoy」(ipilimumab)と同様に制御性T細胞除去作用があり、その結果、癌に対する免疫を賦活することが期待できるのです。我が国で展開中の医師主導の臨床試験で、1例ですがPR(部分寛解)が報告されています。しかし、世界的にも癌免疫療法は併用一本槍の展開で、他の免疫チェックポイント阻害剤やチロシンキナーゼの阻害剤でも同様な作用のあるものとの併用、癌ワクチンとの併用、体外で培養したT細胞との併用などおよそ考えられる限りの組み合わせが試されそうとしています。しかし、私にはどうもそこに大きな落とし穴があるような気がしてならないのです。

 小野薬品が世界に先駆けて悪性黒色腫の治療薬として発売した抗PD-1抗体「オブジーボ」(ニボルマブ)は、画期的な免疫チェックポイント阻害剤の先駆けとなりました。しかし、問題は癌腫によって効能が異なり、悪性黒色腫や非小細胞肺癌などでは20%から15%の患者に有効性を示しましたが、乳癌や大腸癌などでは期待したほど抗癌作用を示せないという問題がありました。また奏効率20%でもおわかりの通り、悪性黒色腫でも単独では5人に1人しか、治療効果が得られないのです。

 こうした問題の解決策は2つあります。第1は個の医療化です。そして第2は併用による奏効率改善です。当初、抗PD-1抗体はそのリガンドであるPD-L1を細胞表面上に持つ癌で有効性がある。そのため、PD-L1が有効性を示すバイオマーカーになるという論文も出ました。しかし、実際に臨床現場ではPD-L1が免疫染色で染まらない癌を持つ患者でも有効である症例に遭遇することもあり、悪性黒色腫ではPD-L1による個の医療化は義務づけられませんでした。

 今後、単独ではもっと奏効率の低い癌腫で、PD-L1をバイオマーカーに効果のある患者を選別する可能性も残っておりますが、現場の医師に聞くとその可能性は低いと考えました。PD-L1自体が必ずしも癌細胞表面に安定して露出される訳ではないのです。現在の免疫染色法では実際に患者を鑑別することも技術的に難しいという問題もありました。

 そこで現在世界の企業が、併用相手を求め、盛んに合従連衡を行っているのです。小野薬品の提携先である米Bristol-Myers Squibb社は自社で免疫チェックポイント阻害抗体をほぼ全部品揃えしており、唯一のミッシングリングが抗PD-1抗体でありました。既に、両社はipilimumabとオブジーボの併用によって非小細胞肺癌の臨床試験において、奏効率50%以上という衝撃的なデータを米国臨床腫瘍学会で昨年発表しております。これが世界の併用競争に拍車をかけたといえるでしょう。

 協和発酵キリンは併用相手に対して来る者を拒まずのオープン戦略をとりました。AZ社とは抗PD-L1抗体(MEDI4736)または抗CTLA-4抗体(tremelimumab)とポテリジオを併用して、固形癌患者を対象に臨床試験を開始します。また、Pfizer社とは抗4-1BB(CD-137)アゴニスト抗体(PF-05082566)との併用で臨床開発契約を結びました。今後も多数の免疫チェックポイント阻害剤や補助刺激因子作動薬との併用が幅広く試されるでしょう。その渦の中心に、我が国の企業が創出したオブジーボとポテリジオがあるのは痛快です。

 しかし、先週末、我が国で数少ない免疫チェックポイントの専門家の集まりに紛れ込んでいたのですが、そこで本当に免疫のブレーキであるチェックポイントを阻害して、腫瘍に対する免疫効果を発揮しているのだろうか? という疑問が提示されました。ひょっとしたら抗PD-1抗体や抗CTLA-4抗体、そして抗CCR4抗体(ポテリジオ)が示す抗癌作用は、免疫のリブート、免疫の再建が行われているのではないか? という魅力的な考えです。もしこれが本当なら、併用戦略も相当な変更が必要ですし、ひょっとしたら自己免疫疾患の治療にもなるかもしれません。今後の研究の推移に目を凝らせなくてはなりません。

 どうぞ皆さん、今週もお元気で。
来週は皆さんをびっくりさせる報告をいたします。

            日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満

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