健康食品と同じ臭いがするOTC遺伝子検査サービス【日経バイオテクONLINE Vol.2127】

(2014.09.26 18:00)
河野修己

 こんにちは。隔週でこのメールマガジンを担当している日経バイオテク副編集長の河野修己です。

 まずは2つお知らせがあります。1つ目は、日本再生医療学会が後援する「2014 World Alliance Forum」が11月に米国サンフランシスコで開催されます。
http://wafsf.org/

 日本からは再生医療学会の岡野光夫理事長以下、京大の山中伸弥教授、江藤浩之教授、理研の高橋政代リーダー、東大の中内啓光教授、阪大の澤芳樹教授、慶大の岡野栄之教授というそうそうたる顔ぶれが招待されており、講演するそうです。

 もう1つは、その岡野理事長が大会会長を務める第5回アジア細胞治療学会年次総会です(11月10日~12日、ハイアットリージェンシー大阪)。現在、ポスターセッションのアブストラクトを募集中ですが、スポンサー企業の獲得に成功したため、優秀ポスターとして5発表を選び、10万円の賞金を贈ることになりました。そのうち3つにはオーラル発表の機会が与えられます。同学会は、多くの方からの応募を待っているそうです。
http://acto2014.info/

 さて、今年のバイオ業界の重要な出来事の1つが、一般消費者向け遺伝子検査サービスの勃興です。ヤフーやDeNAといったこれまでバイオビジネスとは何の関係もなかった企業が新規参入を果たし、本誌でもニュースや特集で報じてきました。

日経バイオテク5月26日号「特集」、市場広がる個人向け遺伝子検査
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20140528/176672/

DeNAライフサイエンスが遺伝子検査サービスを開始、282項目で2万9800円
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20140818/178384/

DeNAの遺伝子検査サービス、ラボを新設しSNPチップで解析
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20140707/177496/

ヤフーが始めるゲノム解析サービス、将来は創薬応用も
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20140512/176021/

トランスジェニック、サインポストの一般消費者向け遺伝子検査を受託解析へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20140818/178458/

 私も、DeNAの子会社であるDeNAライフサイエンスのサービス開始時の記者会見に行ってきました。同社はサービス立ち上げにあたり、この分野の第一人者である東大医科研の宮野悟教授と提携、医科研内に解析ラボも設置しました。

 同社が本気で取り組んでいることはよく分かるのですが、肝心のサービス内容が疑問符だらけなのです。同社のサービスは、この手のものとしては最多の282項目が約3万円で検査できるという点が最大の売りなのですが、「遺伝子検査をして何の意味があるのか」という項目が多く含まれている印象をぬぐえません。

 例えば、癌だけでも約40種類あり、その他、今話題のデング熱やマラリア、COPD、間質性肺炎、加齢黄斑変性、偏頭痛などありとあらゆる疾患が含まれています。こういった疾患を対象に遺伝子検査を行って、有用な結果が得られるのか。確かに論文は存在しているのでしょうが、遺伝子型によって多少リスクが変動するのと実際に臨床的な意義があるのとは次元の異なる話です。何が何でも項目数を増やして消費者にインパクトを与えようとしているのではないか。はっきり言ってしまえば、水増しされていると感じました。

 といったことを考えていたら、雑誌ウェッジの最新号に「遺伝子検査ビジネスは『疫学』か『易学』か」というタイトルの特集が掲載されました。この特集いわく、「個人向け遺伝子検査の対象は、家族性以外のがんや生活習慣病など、遺伝要因の大きさがはっきりせず、遺伝子検査が診断や治療にとって何の役にも立たない病気ばかり」「遺伝子検査から導き出される限定的な情報が、利用者を誤った行動へ導く可能性があるとすれば、有用どころか危険ですらある」「研究者は今まで、必死で研究費を取り、被験者に金を払って検体を集めていた。ところが、個人向け検査では検体をくれる上に、金も払ってくれる。研究者には夢のような話だ」などなど。うなずける指摘ばかりです。

 私はOTC遺伝子検査サービスに、深夜のテレビショッピングなどでさかんに宣伝している健康食品と同じ臭いを感じています。両者に共通しているのは、マーケティング主導であること。マーケティングとは製品・サービスの等身大の価値を顧客に伝えるためのものだと思うのですが、遺伝子検査サービスや健康食品におけるマーケティングとは価値を何倍にも大きく見せるためのものでしかありません。儲かりさえすれば製品・サービスの価値を脚色してもいいのでしょうか。遺伝子検査は特に、サイエンスやエビデンスに真摯でなければならないサービスです。その道を踏み外した時、短期的にはもてはやされても長期的には社会に受け入れられるものとはなり得ないでしょう。

日経バイオテクONLINEメール2014

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