今、取材を進めている上で、癌の発生について考えさせられる機会がありました。

 残念ながら癌に罹患してしまった患者について、仮に少しずつ時間をさかのぼって行き着いた、1個の細胞が発生したときからその方は「癌患者」となるのでしょうか。10個の癌細胞が出来たら? 100個? 癌が組織として正常臓器機能に影響を与え始めたら? それとも1個の細胞が幹細胞性を獲得したときからでしょうか。

 ある研究者は、癌組織を作る細胞が存在し得るにはかなりさまざまな条件を満たす必要があると指摘されました。その条件を具体的に伺うと、酸化ストレスや慢性炎症なども考えられるようです。

 癌組織を作る細胞が生まれる時を素人ながらに想像してみると、

 バイオテク的には、還元型グルタチオンなどラジカルスカベンジャーの発現低下、免疫抑制性分子発現によるT細胞疲弊、IL6やTNFαの過剰産生、アディポネクチンの産生低下やアンジオテンシンIIの過剰産生、などでしょうか。

 医学用語として考えると、ストレス下による活性酸素の過剰発生、塩分、脂肪の過剰摂取、筋力低下と糖分取りすぎによる高血糖の持続やインスリン抵抗性、常に興奮状態が続くことによる慢性炎症、胃酸の過剰分泌による炎症の持続、というイメージでしょうか。

 これを、日常的な言葉で考えてみると、「最近、仕事が立て込んでしまって、長期にわたって残業が続いていたが、ある時、気晴らしをしたくて、一人で安いお店に行って、暴飲暴食、タバコもやって、午前様で帰り、玄関で寝てしまって、朝起きたら風邪を引いていた。仕事を休めない、などと無理して会社に出かけたため、風邪が思った以上に長引いた。朝は辛いからと自腹でタクシー、最近、ほとんど運動していない。上司からはせっつかれて今晩は徹夜。でも明日はクライアントの前で大事なプレゼン。あぁ、部長に呼ばれた、何言われるんだろう? 最近やけに胃が痛い・・・」。

 日常的な用語で語ってみると、何のことはない日常風景になってしまいます。こんなとき細胞が生まれるのだとしたら、我々は何をすべきなのでしょうか?

                          日経バイオテク 加藤勇治