インパクトファクター至上主義からの決別【日経バイオテクONLINE Vol.2113】

(2014.09.03 18:00)
関本克宏

 STAPを巡るさまざまな議論の中で、科学技術に対する評価の在り方、ひいてはインパクトファクター至上主義への疑問が指摘されています。Nature、Cell、Scienceに掲載されなければ研究費は取れないし就職もできない。それが研究の方向をゆがめている。またインパクトファクターが高い雑誌では捏造が多い、などなど。日本だけではなく、昨年あたりから世界的に反省の機運は出ていたのですが。
http://www.theguardian.com/commentisfree/2013/dec/09/how-journals-nature-science-cell-damage-science

 そんな中、日本生化学会が、DORAへの署名を検討しているようです。DORA(The San Francisco Declaration on Research Assessment: 研究評価に関するサンフランシスコ宣言)は、2012年12月にサンフランシスコで開催された米細胞生物学会 (ASCB)大会において採択された「インパクトファクターだけに基づいて論文の優劣を決めて研究者の評価に利用することをやめよう」という宣言です。
http://drf.lib.hokudai.ac.jp/drf/index.php?plugin=attach&refer=Foreign%20Documents&openfile=DORA.pdf

 DORAではインパクトファクターの限界として、以下を挙げています。
・雑誌内における引用の分布はひどく偏っていること
・インパクトファクターの性質は分野の特性に依存しており、また、原著論文とレビュー記事といった、複数のきわめて性質の異なるタイプの記事が混在してできあがっていること
・インパクトファクターは編集方針によってコントロールされる(ないし、操作される)可能性があること
・インパクトファクターの計算に用いられるデータは不透明であり、また公衆に公開されていないこと

 そしてDORAの主張は以下に集約されます。
・雑誌ベースの数量的指標、例えばインパクトファクターの使用を資金助成や職の任命や昇進の検討の際に排除する必要性
・研究が発表される雑誌をベースにするのではなく、研究自体の価値に基づく評価の必要性
・オンライン出版が提供する機会(例えば論文における単語や図表、参考文献の数の無意味な制限の緩和と重要性やインパクトについての新しい指標の調査)を十分に活用する必要性

 DORAでは賛同者にオンライン署名を呼びかけ、多くの研究者個人や学会、ジャーナルの編集部が署名しています。もちろん反対意見もあるのは言うまでもありません。
http://am.ascb.org/dora/

 日本生化学会では現在の中西義信会長になってから、「会長便り」でDORAを始めとする論文の評価について取り上げ、また学会の掲示板で「日本生化学会のDORAへの署名」について意見を募集しています。まだあまり動きがあるようには見受けられませんが、今年のインパクトファクターが発表されてから早1カ月、どういう結論になるのでしょうか。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20140731/177962/
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20140731/177963/

                       日経バイオテク編集長 関本克宏

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https://bio.nikkeibp.co.jp/inquiry/

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