皆さん、お元気ですか。

 全米オープンでは錦織選手が簡単に2回戦を突破、いよいよベスト16を賭けて、カナダのラオニッチ選手と戦います。同選手の剛球サービスはリスクですが、勝つ可能性はあります。頑張っていただきたい。サッカーでも動きがありました。ACミランの本田選手が開幕戦で得点を決め、3対1で快勝、インザーギ監督の下でもほぼレギュラーの座を確保した模様です。強靱なメンタルを示しました。次々と交代した監督と相性が悪かった香川選手もドルトムントに復帰、真価を示す場を与えられました。
http://www.usopen.org/index.html

 さて、本日より「Wmの憂鬱、日本のイノベーター」連載第2弾、ブロックバスターが確実視される高尿酸血症・通風治療薬「フェブリク」の開発秘話の連載を開始しました。どうぞ下記よりアクセス願います。日経バイオテクのトップページやランキングからアクセスすると、日経バイオテクonlineの読者パスワードを要求されますので、このメールのリンクか、Wmの憂鬱のホームページからアクセス願います(月額500円で、月100本まで読み放題)。

〇Wmの憂鬱、日本のイノベーター、第2回の(1)、帝人の医薬売り上げトップに躍り出る『フェブリク』はこうして誕生した
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20140901/178694/?ST=wm

〇連載第一弾は中外製薬の「アレセンサ」の秘密を解読しました。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20140818/178464/?ST=wm

 今後随時、スクープや連載を掲載しますので、どうぞWmの憂鬱Premiumサイト(https://bio.nikkeibp.co.jp/wm/)を毎日チェック願います。日経バイオテクONLINEの会員は勿論ですが、個人購読に限りWmの憂鬱Premiumサイト(https://bio.nikkeibp.co.jp/wm/)から有料(月間500円で100本まで読み放題)でお読みいただけます。これを機会にどうぞお申し込み願います。申し込みも簡単になりました、是非ともお試し願います。

 米国国立衛生研究所(NIH)が、NIHの予算で研究されたゲノム研究に関して情報を収集、表現型と合わせて、誰にでも被験者のプライバシーを守りながら公開する、ゲノム情報の共有のガイドラインを発表しました。国家の医学研究や医療の基盤としてゲノムや疾患、健康情報を共有する仕組みとルールを定めたのです。これによって米国の個の医療が加速することは間違いありません。我が国も折角、来年5月から日本版NIH、日本医療研究開発機構の最初の仕事として、ゲノム・臨床・健康情報の国民との共有を打ち出すべきであると願っております。我が国でもDTC遺伝子検査市場にヤフージャパンやDeNAなどの大手IT企業が参入し、別の意味でのゲノム情報の共有が民間レベルで始まっています。現在、我が国の与党でも法規制などを検討しなくてはならない機運も高まって参りました。国民的議論が必要です。DTC遺伝子診断では、現在我々が直面する問題は2つ。遺伝子泥棒と遺伝情報の解釈の後出しじゃんけんです。
http://www.nih.gov/news/health/aug2014/od-27.htm

 第1の問題である“遺伝情報泥棒”。耳慣れぬ言葉ですが、ベネッセの個人情報漏出事件で児童の個人情報は高く売れる財であることを皆さん自覚したと思います。医薬品開発や健康保険の開発などに不可欠な個人の遺伝情報と医療・健康情報は、児童の個人情報以上に価値の高い個人情報であることを自覚しなくてはなりません。今まではOTC遺伝子診断サービスの企業だった米23andMe社も会員数が25万人を超えたら、特定の遺伝変異を持つ会員に呼びかけて、その遺伝子変異を標的とした分子標的薬の臨床試験のリクルートサービスを開始するなど、遺伝情報/医療・健康情報の複合データベースの提供業者に今や変貌しつつあります。我が国のDTC遺伝子検査サービスも検査料のビジネスでは早晩行き詰まることは避けられません。何故ならば、ゲノム遺伝子検査は極端に言えば一生涯に一度検査すれば済むためです。少子高齢化が進む我が国ではなおさらです。そこで遺伝子泥棒の誘惑に駆られるのです。

 一部のDTC遺伝子検査企業で十分な説明と同意なく、購入者のゲノムや遺伝子情報を匿名化して外部に販売するビジネスモデルを取っていますが、これは立派な泥棒行為です。一刻も早く、こうした不正な取り扱いを取り締まらなくてはなりません。ゲノムも個人情報である以上、いつでも自分の情報を取り下げ、非提供できるような仕組みにしなくてはならないという主張もあります。現在のゲノム倫理指針などでは連結不可能匿名化処理した後には被験者の意思による取り下げ(オプトアウト)が事実上できないことから、それはできないと事前に了解することが要求されています。ここで誤解してはならないのは、連結可能匿名化情報はオプトアウトできるということです。例え研究とは言え、連結可能な情報は被験者の意思によって取り下げられる仕組みと手段を整える必要があります。こうしたことをきちっと説明し、それでも研究に使って良い、しかも研究の成果を企業が私して良いということを被験者、購読者から了解を得ないとフェアな商取引とは言えません。一部の企業ですが、研究としての遺伝情報の提供を承諾しないと遺伝子検査サービスを受けられない条件になっています。これは不公正な取引であると言わざるを得ません。勿論、遺伝子泥棒を防ぐためには、被験者となる一般消費者のリテラシーも増大しなくてはなりません。そろそろ皆さんのゲノム情報と医療・健康情報のリンクが巨大な富を生むことを声高に叫ぶ必要があるのではないでしょうか?

 そして根本的な疑問は、本当に連結不能匿名化が成り立つのか? ということです。全ゲノム情報解析から、さすがに個人名と住所を導き出すことは不可能ですが、これとウェブ上に掲載されている個人情報と組み合わせると、個人とゲノムをリンクさせることは将来可能となるのではないでしょうか? 東京都在住、バイオ大好き、ジャーナリストの3項目の検索で私なんかすぐに個人情報がばれてしまいます。全ゲノム情報から職業選択の志向性(好奇心の強さなど)、人種、出生地の特有のSNPs、文体を決定する変異(まだ見つかっていません)、顔かたち、身長、体重、先祖などを決定する遺伝子などが、今後続々と発見される見込みです。全ゲノムからある程度の身体的特徴とパーソナリティを近い将来推定できるかも知れません。その時、連結可能とか連結不可能というプロセスが、個人情報を守るためにどんな意味を持つのか、もっと科学的かつ社会的議論を為なくてはなりません。アイスランドが国民26万人のゲノムデータと健康情報のデータベースを作成する法案を国会で成立させた時、プライバシーを守るため公開したゲノム健康情報を検索した時に10人以下に絞り込まれる検索には答えを返さないようにソフトで制限したこと、個人の遺伝情報はかかりつけの医師や医療機関を通じてアクセス可能としたことが記憶に残っています。こうした智恵が我が国でも求められているのです。遺伝子泥棒を防ぎ、プライバシー侵害を防ぎ、ゲノム・健康情報を皆で共有するルールを早急に検討しなくてはなりません。

 さて、ゲノム情報から好奇心の量が推測できるのか? 週末にバイオファイナンスギルドの実習を行いました。そのテーマがまさにこれ。山形県鶴岡市の慶応義塾大学先端生命科学研究所で、参加者のドーパミン受容体D4の多型を検出したのです。第1エクソンの繰り返し配列の数が好奇心に関連するという論文を参考にしたのですが、この実験を通じて、現在のDTC遺伝子検査の欠陥を、身をもって知ることができました。

 PCRで繰り返し配列の数を検出するのですが、実験の前に参加者15人に予測を伺いました。繰り返し配列2回と4回が日本人の通常のタイプであり、繰り返し配列が7回以上になると極めて好奇を求める行動を取るとされています。繰り返し配列が長くなると受容体の上に蓋をするような格好になり、ドーパミンの濃度が高くないと刺激を受け取れなくなる。つまりそれだけ刺激を求めるようになるというのが現在の見てきたような説明です。この繰り返し配列の数は中枢神経疾患にも影響するという研究もあります。また、犬では明確ですが他の犬への攻撃性が繰り返し配列の数と比例しております。既におとなしい犬の育種にこの知識は活用されています。参加者の中には7回繰り返し以上だと威勢良く手を上げた方も何人かいらっしゃいました。実験結果は誰一人、7回以上の繰り返し配列は持っておらず、2回と4回のホモか、ヘテロかとまったく標準的な日本人でした。

 好奇心の多寡であれば冗談のネタにもなりますが、こうした研究が進んだ後、2010年10月に米国Binghamton大学のグループがドーパミン受容体D4の繰り返し7回以上の多型を持つ人が浮気と乱婚を行う傾向があるという発表を行いました。こうなると、勢いよく手を上げて、7回以上の繰り返し配列があるとはもう自慢できないでしょう。
http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0014162

 DTC遺伝子診断の限界の背景には、医学研究が常に非対称性であり病気に関係する悪い遺伝子変異から報告するという悲しい性があります。また、現在、その遺伝子変異の特徴だと考えて研究を進めてもそれは遺伝子のたった一面を見ているだけに過ぎないのです。この遺伝子変異を持っているから、一体私の人生にとってどれだけのリスクがあるのか? いつまでも正確には計算できない。追加情報が次々と遺伝子情報とその健康機能のデータベースに現在でも付け加えられつつある未完のデータベースを使って、DTC遺伝子検査の意味を誰も正確に判断できないのです。ぬか歓びや根拠のない悲観を与えているのが真実なのです。だから、DTC遺伝子検査はお神籤に過ぎないとこのメールで何回も繰り返して、皆さんにお伝えする必要があるのです。ドーパミン受容体D4の繰り返し配列で一喜一憂する必要はまったくありません。

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 どうぞ皆さん、今週もお元気で。

            日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満

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