こんにちは。隔週でメルマガを担当しています編集部の久保田です。毎日暑い日が続いていますね。お盆休みに山に行ったのですが、まったく天気に恵まれませんでした。お盆が明けてみたら晴天続きで、何とも悔しいところです。

 さて先日、理化学研究所脳科学総合研究センターの西道隆臣シニアチームリーダーのところに取材に行きました。読者の皆さんもご存じかと思いますが、西道氏は17年の歳月を掛けて、新規のアルツハイマー型認知症(AD)のモデルマウスを開発した人物です。同マウスは、従来のアミロイドβ(Aβ)前駆体たんぱく質(APP)を過剰発現させた組み換えモデルマウスと異なり、AD患者に見られるAPPの遺伝子変異をノックイン技法で導入。患者に酷似したADの病理を再現できるというもの。

 7月に米国の研究者が、最近10年の臨床試験の結果を調べ上げ、「ADの新薬候補の脱落率は99.6%に上る」という衝撃の論文を発表しましたが、西道氏はその一因として、「ADの病態を再現できるモデルマウスがなかったこと」を指摘していました。西道氏らが開発したマウスは、より“自然に”ADを発症することから、新薬のスクリーニング系として、業界の注目や期待を集めています。

米研究者ら、アルツハイマー型認知症治療薬の開発失敗率は99.6%
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20140707/177497/

 実は、私が西道氏のところに伺ったのは、研究について取材するためではなく、西道氏が8月に設立したベンチャーについて話を聞くため。理研バイオと命名されたそのベンチャーは、開発したマウスの企業への提供などを手掛けるとのことなので、近いうちに読者のみなさんもお世話になるかもしれません。

理研西道氏、ベンチャー企業設立しアルツハイマー病の診断薬など開発へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20140820/178522/

 そしてその取材で私が最も驚いたのは、西道氏が起業した背景です。同氏が真っ先に挙げたのは、理研の技術者の雇用が安定していないという実情でした。「そもそも理研の技術者は毎年契約の更新が必要な上、研究室主宰者が退職すると研究室が閉鎖され、職探しが必要になる」(西道氏)のです。30歳代前半まではともかく、35歳以上になると、技術者と言っても新たな職場は簡単には見つかりません。理由を聞いた私は、「そういう考えもあるのだな」と妙に納得してしまいました。

 もちろん理研バイオでは、ADの診断薬や予防薬の開発も手掛ける予定であり、「AD患者を減らしたい」という西道氏の思いも起業の背景にあったことは付け加えておきます。

                          日経バイオテク 久保田 文