こんにちは。隔週でこのメルマガを担当している日経バイオテク副編集長の河野修己です。

 今週火曜日に、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(CDB)の笹井芳樹副センター長に関する記者会見に参加しました。

理研の加賀屋室長が会見、「遺書は合計で4通ある」
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20140805/178139/

 会見でのやり取りを聞きながら私は、一連の騒動を釈明するため笹井氏が出席した4月の会見で、彼が何を話していたかを思い出そうとしていました。

理研・笹井氏会見、「小保方氏の会見を見て心が痛んだ」
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20140417/175496/

 私が印象に残っているのは、「STAPが存在すると仮定しないと説明できない現象がいくつもある」という発言と、「PI(独立研究者)である小保方氏にノートや生データを見せろとは言えなかった」という発言です。前者は、遺伝子操作無しで細胞の初期化が起こるという現象に研究者として強い興味を覚えたという本音の発露に聞こえました。また、後者は、研究コミュニティーの文化を分かっている人なら、うなずけるのではないでしょうか。笹井氏の表情からは、「まさかPIがこんなことするか」との苦渋が読み取れました。

 私は以前のメルマガで、「この騒動が発生した原因は小保方氏個人に依拠している部分が多い。民間企業の組織論のようなものを適用して、理研の責任を追及しない方がいい」との主旨の文章を書きましたが、検証委員会の結論は、CDB幹部の退任だけでなく、CDBそのものを解体せよとの内容でした。資金を確保しCDB設立を実現させた笹井氏にとって、自らの退任はまだしも、同僚が路頭に迷うかもしれない事態を招いてしまったことは、慚愧の念に堪えられなかったのかもしれません。

 日経バイオテクでは、笹井氏が京大に所属していたころから、彼の研究成果について何本もの記事を掲載しています。その中には、見出しに世界初と付けたものも含まれています。追悼の意味を込めて、笹井氏関連の記事を以下に示しておきます。

京大、協和、マウスES細胞からドーパミン産生神経細胞の分化誘導に成功
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/0001/3618/

京大、カニクイザルES細胞から神経細胞分化誘導に成功、世界初
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/0001/7474/

理研と京都府立医大、ヒトES細胞から神経細胞を高効率に産生、
臨床応用を見越し、動物成分使わない新培養法
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2003/7048/

理化学研究所、Rhoキナーゼ阻害剤はヒトES細胞の効率培養に
欠かせない試薬
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/4365/

理化学研究所、ヒトES細胞とiPS細胞から層構造を持つ大脳皮質を作製
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/7382/

理化学研究所、ヒトES細胞、iPS細胞の分散培養を可能にする発見
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/2977/

理研CDB、Zfp521たんぱく質がES細胞やiPS細胞から
神経系細胞への分化を決定
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/7197/

理研CDB、ES細胞から人工網膜組織の3次元形成に成功、
網膜色素変性症に対する再生医療に道
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/8228/

理研CDBと名大、ES細胞から機能的な下垂体の3次元器官を形成、
Nature誌に発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20111109/157771/

理化学研究所、ヒトES細胞から眼杯の作製に成功
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120612/161533/